性的同意
トピック:性教育の第2回講座「性的同意」へようこそ。
性的同意ってなぁに
[編集]性的なことをするときは、相手の気持ちを大切にし、おたがいが「してもいい」と思っていることをたしかめることが大切です。これを「性的同意」といいます。
性教育では、相手を尊重するために、できるだけおたがいが納得して、安心して性的なことをすることを大切にします。「嫌がっていないから大丈夫」と考えるのではなく、相手が本当に大丈夫そうか、途中で気持ちが変わっていないかにも気を配ります。ただし、後半で解説していますが、法律では気持ちを大切にしなくても、したくなくても同意になることがあるなど、性教育とは考え方が異なる場合があります。
同意の示し方はいろいろあります
[編集]同意は、必ずしも「YES」「していいよ」と言葉ではっきり伝える場合だけではありません。
人の気持ちの伝え方はさまざまです。言葉で伝える人もいれば、うなずく、相手に近づく、自分から行動するなど、表情やしぐさ、行動によって気持ちを伝える人もいます。手話、文字、視線、コミュニケーション機器などを使う人もいます。
沈黙、受動的態度、流されることは同意ではないと、一部では言われることもありますが、それがその人にとって同意を表していることもあります。
また、身体障害や言語障害などによって、声を出したり、一般的なしぐさをしたりすることが難しい人もいます。そのため、「言葉でYESと言えなければ同意できない」というわけではありません。
実際のコミュニケーションには、はっきりしたものから曖昧なものまであり、言葉と行動が組み合わされることもあります。長く付き合っている人どうしでは、おたがいに意味を理解しているしぐさなどで意思を伝えることもあります。
ただし、同意の示し方が多様であることと、曖昧な反応を自分に都合よく「同意だ」と決めつけてよいことは別です。相手の気持ちが分からないときには、言葉や、その人が使いやすい方法で確かめることが大切です。
また、人の同意の表し方はそれぞれなので、人の事情について勝手にあれこれ判断して決めないようにしましょう。
同意はそのとき、そのことについてのものです
[編集]一つのことに同意したからといって、ほかのことにもすべて同意したことにはなりません。また、以前に同意したことがあっても、今回も同じとは限りません。途中で気持ちが変わることもあります。
たとえば、キスをすることに同意したからといって、それだけでさらに別の性的な行為にも同意したことにはなりません。
ただし、これは、行動を一つ進めるたびに必ず「していい?」と聞かなければならない、という意味ではありません。実際には、会話や表情、しぐさ、おたがいの行動などを通して気持ちを確かめながら、少しずつ進んでいくこともあります。
性的な行為は少しずつ続いていくことも多く、どこからが「別の行為」なのかを、すべてはっきり区切れるわけではありません。そのため、一つ一つを機械的に質問することよりも、相手の反応を見ながら進めることが大切です。
相手が自分から近づいてきたり、応じたりしているのか、それとも動きが止まったり、迷っているように見えたり、体を離そうとしたりしているのかなど、そのときの様子にも注意します。
分からなくなったときや、大きく違うことをしようとするときには、「大丈夫?」「これしてもいい?」などと確かめることができます。
大切なのは、「一度OKだったから、そのあとは全部OK」と考えないことと、反対に、性的なやりとりのすべてを質問と返事だけで進めなければならないと考えないことです。
性教育と刑法は同じではありません
[編集]性教育で望ましいとされることと、刑法で犯罪になることは同じではありません。
性教育では、「相手の気持ちを大切にする」「できるだけ分かりやすく気持ちを確かめる」「少しでも嫌なら無理をしない」といった、よりよい人間関係をつくるための考え方が教えられます。
たとえば、「今日はあまりしたくないけれど、相手のためならしてもいい」と、自分で考えて同意することもあります。気が進まなかったり、あとから「しなければよかった」と思ったりすることもあります。性教育では、このような場合にも無理をせず、自分の気持ちを大切にすることがすすめられます。
一方、刑法は、相手への思いやりが足りなかったことや、十分に気持ちを確かめなかったことを、すべて犯罪にするものではありません。刑法は、人を犯罪として処罰するための最低限のルールです。
暴力や脅し、アルコールや薬物、睡眠、恐怖、立場を利用した影響などによって、相手が断ったり、自分の意思を貫いたりすることがとても難しい状態だったかなど、そのときの事情を見て判断されます。
そのため、「もっと相手を尊重したほうがよかった」ということと、「刑法上の犯罪である」ということは分けて考える必要があります。
一例を考えてみましょう。
たとえば性教育では、「性的なことをするときは、おたがいにシラフで、アルコールの影響がない状態が望ましい」と教えられることがあります。これは、酔っていると気持ちを伝えにくくなったり、相手の反応を読み違えたりしやすくなるためです。
しかし、刑法では「お酒を飲んでいた、酔っていた」というだけで、同意がなかったことになるわけではありません。
日本の刑法では、アルコールの影響によって、意思決定が難しい状態におかれて初めて犯罪が成立します。酔っていても同意が出来る可能性は十二分にあるのです。
つまり、性教育では「できるだけ安全で、おたがいを尊重できる状態」を目標にしていますが、刑法では「犯罪として処罰するほど、自由に意思を決めたり断ったりすることが難しい状態だったか」を判断します。
これは、性教育がよりよい行動をすすめるための基準であるのに対して、刑法は人を犯罪として処罰するための最低限の基準だからです。
インターネットの記事を読むとき
[編集]インターネットで「性的同意」について調べるときには、その記事が何について説明しているのかにも注意しましょう。
性教育の記事では、「どうすれば相手を大切にできるか」「より安全なコミュニケーションは何か」という、望ましい行動について説明していることがあります。
一方、刑法の記事では、「どのような場合に犯罪として処罰できるのか」という基準について説明します。
この二つは目的が違います。
たとえば、性教育で「はっきりYESを確認しましょう」とすすめられていても、それがそのまま「YESという言葉がなければ犯罪になる」という意味になるわけではありません。
反対に、刑法上の犯罪にならないからといって、その行動が相手を十分に尊重したものだったとは限りません。
記事を読むときには、「これは性教育の話なのか、刑法の話なのか」「二つの基準を混同していないか」を考えてみましょう。
煽り弁護士事務所に注意
[編集]インターネットでは、弁護士や法律事務所が性犯罪について解説している記事も多くあります。
こうした記事の中には、「逮捕される」「前科がつく」「人生が終わる」など、不安を強く感じさせる書き方をしているものもあります。もちろん、本当に早く相談したほうがよい場合もあります。
ただし、法律事務所のサイトには、法律相談や依頼につなげるための広告・集客として作られている記事もあります。法律事務所も営利で活動しているため、相談してもらうことに経済的な利益があります。そのため、危険性を強く書いたり、不安を感じやすい表現を使ったりする場合があります。
だからといって、その記事が間違っているとは限りません。しかし、書かれている最悪のケースが、自分にもそのまま起こるとは限りません。とはいえ記事が明らかに間違っているかもしれません。
不安になったときは、一つの法律事務所の記事だけを見て判断せず、裁判所、法務省、警察などの公的な情報や、複数の資料もあわせて確認することが大切です。
被害を相談されたとき
[編集]性的な被害について話した人を、「どうして逃げなかったの?」「あなたにも悪いところがあったのでは?」などと責めたり、からかったりすることは、その人をさらに傷つけることがあります。このようなことは「二次被害」や「セカンドレイプ」と呼ばれることがあります。
被害を相談されたときには、決めつけたり責めたりせず、まず話を聞くことが大切です。
一方で、誰かが被害を訴えたというだけで、相手が犯罪をしたと直ちに決まるわけでもありません。事実と違う申告や、当事者どうしの認識が食い違う場合もありえます。
そのため、「被害を訴えた人は嘘をついている」と最初から決めつけることも、「訴えられた人は犯罪者だ」と最初から決めつけることも避ける必要があります。
刑事裁判で人を有罪にするためには、証拠をもとに、その人が犯罪をしたことが十分に証明されなければなりません。被害の申告があったというだけで、簡単に有罪になるものではありません。
被害を訴えた人を傷つけないことと、犯罪をしたかどうかを証拠に基づいて慎重に判断することは、どちらも大切です。
困ったときは
[編集]もし、性的なことで「嫌だった」「断れなかった」「これって被害なのかな」と悩んでいる場合は、一人で決める必要はありません。
性犯罪・性暴力については、全国共通の相談窓口「#8891(はやくワンストップ)」などで相談できます。警察に相談したい場合は「#8103(ハートさん)」があります。