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数学I

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数学I(すうがくいち)は、文部科学省が告示した学習指導要領に定められた、高等学校の数学の基礎となる科目である。

数学Iの趣旨・目標

この科目は,この科目だけで高等学校数学の履修を終える生徒と引き続き他の科目を履修する生徒の双方に配慮し、高等学校数学としてまとまりをもつとともに他の科目を履修するための基礎となるよう、(中略)四つの内容で構成した。これらの内容は,生徒が学習する際,中学校数学と円滑に接続できるよう、中学校数学の(中略)領域構成を継承したものでもある。[1]
数と式、図形と計量、二次関数及びデータの分析について理解させ、基礎的な知識の習得と技能の習熟を図り、事象を数学的に考察する能力を培い、数学のよさを認識できるようにするとともに、それらを活用する態度を育てる。[1]

第1章 数と式

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第1章で学ぶのは数と式である。これは、中学校数学の数と式を発展させた単元である。

実数

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有理数と有限小数、無限小数

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ある整数mと、0でない整数nを用いて、の形で表される数のことを有理数という。例えばmは、と表せるから、有理数である。また、はもうこれ以上約分できない分数であり、これを既約分数という。

有理数は必ず小数で表すことが出来る。例えばや、などである。 この時、は小数第2位までで表せるが、の小数部分は無限に続く。0.25のような、小数部分が有限の長さである小数を有限小数、0.3333333333...のような、小数部分が無限の長さである小数を無限小数という。また、特に0.3333333333...()や0.142857142857...()のような同じ順序で無限に繰り返される無限小数を循環小数といい、の形で表される。

また、有限小数と循環小数は必ず分数で表すことができ、有理数になることが知られている。

問1:有理数の判別
次の数が、有理数であるか無理数であるかを判別せよ。





実数とは

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有理数である数と、無限小数で表せる数を合わせて実数という。また、実数のうち有理数でないものを無理数という。あらゆる実数は、1つの数直線上に表すことが出来る。

絶対値

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ある数直線上にある点Pについて、原点からの距離を表す実数xを用いて、Pの位置をと表すことができ、また点Pと原点との距離を絶対値といい、|(絶対値記号)を用いてと表す。

が正の数であるとき、の大きさはの大きさと等しい。また、が負の数であるとき、を-1倍した値と等しい。

が実数でありかつ0でないとき、は、必ず正の実数になる。

根号を含む式

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2乗してaになる数を、aの平方根という。正の数aの平方根はの二つがあり、これらをまとめてと表す。 この記号を、根号という。

なお、である。また、負の数の平方根(つまり、2乗して負の数になる数)は実数の範囲には存在しない。

根号を含む式の計算においては、次の公式が有用である。(a, b, xはともに0より大きいものとする)



特に②については、次で述べる分母の有理化で使用する。

分母の有理化

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分母を根号に含む式において、分母と分子に適当[注釈 1]な同じ数をかけ、分母に根号を含まない式にすることを、分母を有理化するという。例えばの分母を有理化するとすると、まず先の公式②よりとなる。これの分母と分子を倍すると、となる。

また、分母が根号を含む多項式になっている分数であるときは、となること[注釈 2]を利用して有理化する。

例えばを有理化するとすると、分子と分母にを掛けて、となる。

これの括弧や根号を外すととなり、これを計算するととなる。

問2:分母の有理化
次の分数の分母を有理化せよ。




補足:なぜ分母を有理化するのか?
例えば、をそのまま計算するととなるが、分母を有理化してから計算するととなり、比較的簡単に計算ができる。

対称式

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ある式について、この式のの位置を入れ替えた式は元の式に等しい。このような文字を入れ替えても元の式に等しくなる式のことを対称式という。特に、ある数の対称式は、の2つであることが知られている。これを、についての基本対称式という。

多項式

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単項式と多項式

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のように、数や文字、またはそれらを掛け合わせて作られた式を単項式といい、掛け合わせている文字の個数を次数、文字でない部分の値を係数という。例えば、の次数は0, 係数は2。の次数は3, 係数は-7である。

のように、2つ以上の単項式の和で表される式のことを、多項式という[注釈 3]。また、多項式を構成する1つ1つの単項式のことを多項式のという。多項式では、各項の次数のうちで最大のものをその多項式の次数として扱い、次数がである多項式のことを次式という。

多項式において、着目する字(など)を含まない項のことを定数項という。定数項の次数は基本的に0である[注釈 4]

多項式の整理

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についての多項式において、のように文字とその次数が同じである項を同類項という。同類項は、のようにして、1つにまとめることが出来る。

多項式は、ある文字に着目して、次数の高い順に並べて整理することが多い。このような並べ方を、降べきの順[注釈 5]という。また逆に次数の低い順から並べる並べ方を昇べきの順[注釈 6]という。

問3:多項式の整理
次の式をについて整理せよ。





補足:文字が2つ以上あるときの降べきの順
ここでは、例としてという式について考える。まず最初に、に着目して考える。

について着目するときは、を一旦ないものとして考え、を次数の大きい順に並べる。すると、このようになる:

次にに着目してを、の次数が一番小さい項の後ろに次数の大きい順に並べる。すると、このようになる:

これで、この多項式を整理することが出来た。このような整理の仕方を、についての降べきの順に整理するという。についても、同様の方法で整理できる。

多項式の和と差

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多項式の和や差を求めるには、同類項同士を計算すればよい。例えば、の和を求めるときは、と計算する。

単項式の乗法

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一般に、乗である数をと表し、この時の指数という。

また、ある数の累乗である数について、次の指数法則が成り立つ。(次の式においては正の整数である)



展開とは

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多項式の積において、分配法則


を用いて単項式の和の形に表すことを展開すると言う。

乗法公式

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多項式を展開するときには、次の4つの公式がよく利用される。




また、④を発展させたものとして、次の公式もよく利用される。

これら5つの公式を合わせて、乗法公式という。

問4:式の展開
次の式を展開せよ。ただし、必ずしも乗法公式を用いるわけではない。





展開の工夫

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例えばの展開を考える。このままでは展開に時間がかかるが、を一つの組と考えることで、簡単に展開ができる。ここでは、を仮にと置く。



乗法公式より、
を代入して、
乗法公式より、

このように、展開のしかたを工夫することで、簡単に展開ができる。

また、これに関連して、の展開を考えてみる。を一つの組として考えると、これも簡単に展開できる。

まず乗法公式より、



これを整理して、

これは有名な展開の一つであるから、覚えておくとよい。

また、のように、の順番で書くことを輪環の順(りんかんのじゅん)に表記するという。

因数分解

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ある多項式を、2つ以上の多項式の積の形に表すことを因数分解するといい、それぞれの多項式を因数という。

因数分解には、分配法則の逆を用いる。


この各項に共通な因数でくくることを、共通因数をくくりだすという。因数分解では、これが基本となる。

また、因数分解に使われる公式も乗法公式の逆の式である。





因数分解の工夫

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展開と同様に、そのままでは因数分解が難しい式でも工夫することで簡単に因数分解することが出来る。

例えば、展開の工夫で扱ったの因数分解を考える。
まず、①の式を用いて因数分解をする。
次に、を一つの組と考える。
③の式を用いて因数分解をする。
最後にを代入する。
これで、式を因数分解することが出来た。

また、2つ以上の文字(xとyなど)を含む多項式では、一番次数の低い文字に着目すると、因数分解がしやすくなる。

問5:因数分解
次の式を因数分解せよ。





1次不等式

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不等式の性質

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実数の大小関係は、(小なり)、(大なり)、(小なりイコール)、(大なりイコール)を用いた式で表すことが出来る。この式のことを、不等式という。また不等式のうち、次数が1であるもの(など)を1次不等式という。

ある2つの実数の間では、, , のいずれかの関係のみが成り立つ。また、に同じ数を足したり、引いたり、掛けたり[注釈 7]、割ったりしても[注釈 7]必ず大小関係は変わらない。

ただし、0以下の数を掛けたり、割ったりすると両辺の大小関係は入れ替わる。

1次不等式の解法

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ここでは例として、についての不等式を満たすの範囲について考えてみる。

例えばはこの不等式を満たすが、はこの不等式を満たさない。

のような、xについての不等式を満たすxの値を不等式の解という[注釈 8]。また、不等式のすべての解を求めることを不等式を解くという。

を解くと、両辺から2を引いて、となる。このは、2よりも大きいすべての実数という意である。

また、不等式においても等式と同様に移項して解くことが出来るが、前述のとおり負の数を掛けたり、割ったりすると不等号の向きが入れ替わる(になるなど)ため、注意が必要である。

連立1次不等式

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2つ以上の不等式を組にしたものを連立不等式といい、特に次数が1のものを連立1次不等式という。また、それぞれ不等式の解の共通範囲を求めることを、連立不等式を解くという。

連立不等式を解く時は、数直線を利用すると比較的簡単に解くことが出来る。

問6:不等式
次の不等式を解け。






⑦(発展)

絶対値を含む不等式

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ここでは、絶対値を含む不等式、つまりについて学ぶ。

絶対値を含む不等式については、一般に次のことが言える。
のとき、

なお、を合わせた範囲を意味する。

問題の解答・解説

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問1:有理数の判別問題

① 有理数。(解説略)
② 有理数。(解説略)
③ 有理数。(解説略)
④ 無理数。は円周率であり、円周率は3.14159265...と無限に続く数であるから。
⑤ 有理数。は0.142857142857...と無限に続く循環小数であるから。
⑥ 有理数。は循環小数であり、また1と等しいことが示されているから。

問2:分母の有理化問題

。分母と分子を倍し、約分することで求められる。
。(解説略)
。分子と分母にを掛け、約分することで求められる。
。分子と分母にを掛けると求められる。

問3:多項式の整理問題

。(解説略)
。(解説略)
。括弧を外して計算することで求められる。
。まず降べきの順に並べてから、それぞれを足し合わせる。
。まずを降べきの順に並べ、の後ろに、の後ろに並べる。

問4:式の展開問題

。括弧を外す。
。乗法公式①を用いる。
。乗法公式②を用いる。
。乗法公式③を用いる。
。乗法公式④を用いる。
。乗法公式⑤を用いる。

問5:因数分解問題

。2でくくる。
。3xでくくる。
。因数分解の公式③を用いる。
。因数分解の公式①を用いる。
[注釈 9]。因数分解の公式④を用いる。

問6:不等式問題

。(解説略)
。5を右辺に移項し、両辺を-1倍する。
。3を左辺に、1を右辺に移項する。
。3を右辺に移項し、両辺を倍する。
。それぞれの不等式を解くとになる。
。それぞれの不等式を解くとになる。
⑦ 解なし。それぞれの不等式を解くととなるが、この2つの式の共通範囲がないため、解はない。

第2章 集合と命題

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第2章では、数学上非常に重要な集合命題、そして基本的な証明について取り扱う。

集合

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集合とは

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ある数の集まりのうち、それに属しているか属していないかを区別できる集まりのことを、集合という。集合は、のような大文字を使って表すことが多い。

集合に含まれる1つ1つのものを、その集合の要素[注釈 10]という。

がある集合の要素であるとき、は集合属するといい、またはと表す。

が集合Aの要素でないときは、またはと表す。

集合の表し方

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集合を表すとき、主に次の2種類の表し方がある。

(1)集合の要素を書き並べて表す[注釈 11][注釈 12]
(2)要素の満たす条件を述べて表す[注釈 13]

例えば、6以下の自然数の集合を考える。これを(1)の方法で表すと、

となる。

(2)の方法で表すと、

[注釈 14]
[注釈 15]

など、様々な表し方がある。

補足:集合を表す様々な文字

一部の集合については、次のような文字で表すことが多い。

(自然数全体の集合)
(整数全体の集合)
(有理数全体の集合)
(実数全体の集合)

例えば、や、のようにあらわすことが出来る。ただし、高校数学でこれらを用いる場合、これが何の集合であるかを定義する必要がある。

部分集合

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一般に、ある集合のどの要素も別の集合の要素であるとき、部分集合であるといい、またはと表す[注釈 16]であるとき、に含まれる、またはを含むという。

また、かつ[注釈 17]であるとき、等しいといい、と表す。

補足:部分集合と真部分集合

先ほど述べたように、であってもの部分集合であると言える。では、であるとき、AとBの関係はどう表現すればよいのだろうか?

数学においては、かつのとき、AはBの真部分集合であるといい、で表す[注釈 18]

共通部分と和集合

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2つの集合において、どちらの集合にも属する要素全体の集合を共通部分といい、で表す。また、の少なくとも一方に属する要素全体の集合を和集合といい、で表す。

例えば、自然数全体の集合において、である自然数の集合と、である整数の集合があるとする。この時、

となる。

空集合

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自然数全体の集合と、負の整数全体の集合の共通部分のように、要素を1つも持たない集合のことを空集合と言い、∅ またはで表す[注釈 19]。空集合は、あらゆる集合の部分集合となる。

全体集合と補集合

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集合について考えるとき、ある集合を定めて、その集合の要素や部分集合について考えることが多い。この集合のことを全体集合といい、主にで表す。また、の部分集合において、その集合に含まれないの要素のことを補集合といい、で表す。

例えば先ほどの例においては、が全体集合であり、に属さない13や27などはに、に属さない1はに属する。

発展:ツェルメロ=フレンケル集合論

ツェルメロ=フレンケル集合論(略:ZF公理系、ZFC公理系など)とは、ドイツの数学者エルンスト・ツェルメロが提唱した、公理系のことである。大学数学の「数学基礎論」の一分野である「集合論」で取り扱う。

集合が同じ要素を持つならばであるという外延性の公理や、 空集合でない集合は必ず自分自身に交わらない要素を持つという正則性公理など、10つのw:公理からなる。詳細はw:ツェルメロ=フレンケル集合論を参照のこと。

ド・モルガンの法則

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一般に、集合について次の法則が成り立つ。


これを、ド・モルガンの法則という。

命題と証明

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命題

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数学において、正しいか正しくないかが決まる文章や式のことを命題 (proposition)という。

命題が正しい時、命題がである、または成り立つといい、正しくないとき命題がである、または成り立たないという。

また、のように、ある値を代入することで真か偽が定まる文章や式のことを条件という。

一般に、命題はある2つの条件を用いてならばという形で表されることが多い。このとき、を仮定、を結論といい、と表す。

ある命題が偽であることを示すには、であり、かつでない例を1つ示せばよい。このような例を、反例という。

また、ある条件に対して、「でない」というのも条件である。
条件「でない」を否定といい、で表す。

補足:「または」と「かつ」の否定

ある条件とその条件を満たす集合を考え、また全体集合をとする。このとき、次の条件

かつ (つまり)
または (つまり)

の否定である

かつでない (つまり)
またはでない (つまり)

は、ド・モルガンの法則より次のように表せる。

でないまたはでない (つまり)
でないかつでない (つまり)

必要条件・十分条件

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一般に、2つの条件について、命題が真であるとき次の2つのことが言える。

は、であるための十分条件である。
は、であるための必要条件である。

また、かつ、すなわちであるとき、一般に次の3つのことが言える。

同値である。
は、であるための必要十分条件である。
は、であるための必要十分条件である。

であるとき、それぞれの条件を満たす集合について、である。

例えば、について、ある2つの命題

(これをと置く)
(これをと置く)

を考える。
は、適当な値が2通り[注釈 20]存在するから、偽である。また、は他に適当な値が存在しないから、真である。
このとき、であるための必要条件、であるための十分条件である。

逆・裏・対偶

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ある命題に対して、

対偶

という。

また一般に、次のことが言える。

命題とその逆や裏の真偽が一致するとは限らない。
命題と、その対偶の真偽は一致する。

背理法

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ある命題に対して、その命題が成り立たないと仮定し、矛盾が生じることを示すことで求め偉大を証明する方法がある。このような証明方法を背理法という。

例えば、三角形には必ず2つ以上の鋭角[注釈 21]が存在することを証明するとする。
この命題が成り立たないとすると、「三角形には必ず2つ以上の鈍角もしくは直角が存在する」ことになる。
しかし、これは「三角形の内角の和は必ず180°になる」という定理に矛盾する。従って、この仮定は誤りである。
よって、もとの命題は正しいことになる。

補足:「任意の」

数学には、「任意の」(arbitrary)という言葉が存在する。日常生活においては、「任意」という言葉は「思いのままに」「自由に」といった語義で用いられるため、「ある」に類する言葉だと誤解されることがある。
しかし、これは全くの誤りである。この「任意の」という言葉は、数学では「どの~であっても」「いずれの~でも」(any, all[注釈 22])という語義で用いられる。

脚注

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注釈

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  1. ここでいう適当とは、相応しいという意である。
  2. 後述の乗法公式
  3. 整式ともいう。
  4. ただし、0の次数は考えない(定義されていない)
  5. 降冪の順
  6. 昇冪の順
  7. 7.0 7.1 ただし、0より大きい実数について。
  8. 不等式のすべての解の集まりを不等式の解ということもある。
  9. でも可。
  10. (げん)とも。
  11. これを外延的記法という。
  12. 集合の要素全てを書き並べる必要はなく、…などを用いて省略することが出来る。
  13. これを内包的記法という。
  14. ただし、は自然数かつ
  15. ただし、は自然数
  16. を許すの方が正確ではあるが、この章においては便宜上特記がない限りを用いる。
  17. かつ
  18. の部分集合でない)と混同しないよう注意が必要である。
  19. ギリシャ文字のΦ(ファイ)を用いて表すこともある。
  20. 0°より大きく90度より小さい角
  21. たいていの場合ではallに変換できるが、文脈によっては変換できないので注意を要する。

出典

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  1. 1.0 1.1 高等学校学習指導要領解説 数学編』文部科学省、2009年11月(一部改変)