その他の財産に対する罪

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ここでは、これまで扱ったもの以外の財産に対する罪として、盗品等関与罪や、器物損壊罪、建造物損壊罪などについて扱います。

この講座は、刑法 (各論)の学科の一部です。

前回の講座は、背任罪、次回の講座は、公共の危険に対する罪です。

盗品等に関する罪[編集]

総説[編集]

盗品などに関する罪は、財産罪のうち、領得罪とされる窃盗・強盗・詐欺・恐喝及び横領の罪によって不法に領得された物について、その無償譲受け、運搬、保管、有償譲受け、有償処分あっせんをすることを内容とする犯罪です。これらを包括して盗品等関与罪と呼び、また盗品等の領得罪を本犯、本犯の行為者を本犯者といいます。

本罪の意義については、以下のような見解が主張されます。

  • 犯罪によって違法に成立した財産状態を維持・存続させることを内容とする見解(違法状態維持説)。
  • 本犯の被害者である本権者の私法上の追及権行使を困難にする犯罪であるとする見解(追及権説)。従来の通説です。
  • 追及権の侵害と、違法状態維持説及び利益関与性・事後従犯性など含む犯罪であるとする見解(折衷説、新しい違法状態説など)。

追及権説に対しては、本罪の刑が重いことにつき十分説明できないこと、追及権説の論理からすれば追及権がない場合には犯罪不成立となるが、一般にそうとも考えられないことなどにより、批判がなされています。

盗品等関与罪には、親族相盗例の適用はありません。判例・通説によれば、親族間の犯罪の特例(257条1項)が適用され、本犯者と本罪の行為者に親族関係がある場合には刑が免除されることとなります。盗品等関与罪の犯人間に親族関係がある場合については、判例・多数説はこの特例の適用を否定しますが、これに対し肯定する見解も主張されています。

客体[編集]

本罪の客体は、盗品その他財産に対する罪にあたる行為によって領得された物です。ここで、その領得行為は犯罪として処罰されるものである必要まではなく、財産罪の構成要件に該当する違法な行為であれば足りると解されています(大判大正3年12月7日刑録20輯2382頁、最判昭和25年12月12日刑集4巻12号2543頁(親族相盗例が適用される場合))。もっとも、本犯が外国人によって外国で侵された場合に、日本の刑法で本犯を有罪とできない場合において、本罪の盗品に該当するか否かなどについては、見解が分かれています。

また、所有権に基づく物権的返還請求などが行い得るときには、当然に盗品性が認められます。これに対し、第三者が盗品等を即時取得した場合などには、その盗品性は消滅します。もっとも、判例によれば2年間は占有者に対して返還請求ができるため、その間は盗品性は失われないとされています(大判大正6年5月23日刑録23輯517頁)。

不法原因給付物については、本罪の罪質に関する学説の対立も反映して見解が分かれています。学説上、そもそも不法原因給付物につき財産犯が成立するか否かについても見解が分かれていますが、不法原因給付物について犯罪が成立との見解の中でも、さらに本罪が成立するか否かについて見解が分かれているのです。法律上の追及権が必要とする見解もあれば、事実上の追及権でよいとする見解もあり、事実上の追及権でよいとの見解は、強盗罪や詐欺罪においてはその事実上の所有状態が刑法上保護されている以上、その限りで盗品性が認められる、などといいます。

被害者が返還を求め得るのは盗品それ自体であるため、盗品等の対価として得たものは本罪にいう盗品等ではなく、また盗品である金銭で購入した物も同様です。もっとも、判例においては金銭を両替した場合(大判大正2年3月25日刑録19輯374頁)や、小切手のように取引上金銭と同一視できるものについて、それを呈示して現金を取得した場合の現金それ自体(最判昭和24年10月1日刑集3巻10号1629頁)について、盗品性を認められています。もっともこれに対して批判もなされており、例えば小切手などを呈示して現金を受け取る行為は、詐欺罪に当たるのであるから、それにより当該現金に盗品性を認めるのが妥当とする見解などが主張されます。

行為[編集]

本罪の成立には、故意として、当該物が盗品等であることの認識が必要です。もっとも、何らかの財産罪に当たる行為により領得されたものであることの認識があれば足り、また被害者や犯人について知る必要まではありません(最判昭和30年9月16日裁集刑108-485)。

本罪の、無償譲受けなどの行為について本犯助長性・事後従犯性を考慮する立場からは、本犯者ないし盗品等関与罪の犯人と意思を通じて行われることが必要であり、盗品等の窃取・横領行為では、本罪は成立しないものとされます。

各行為類型[編集]

盗品等無償譲受け罪
盗品等無償譲受け罪は、盗品等を無償で自己の物として取得するものを言います。贈与のほか、利息なしに消費貸借として交付を受ける場合にも無償譲受けに該当するとした裁判例(大判大正6年4月27日刑録23輯451頁)があります。契約成立などだけでは足りず、実際に引き渡されることが必要とされます。
盗品等運搬罪
盗品等運搬罪は、委託を受けて盗品等の所在を移転することを言います。必ずしも本犯から委託を受ける必要はありません。なお、被害者方に運搬する行為が運搬罪に当たるか否かは、見解が分かれています。判例(最判昭和27年7月10日刑集6巻7号876頁)は、被害者のもとに運搬した事案につき、その運搬は窃盗犯人の利益のためにその領得を継受して贓物の所在を移転したものとして、運搬罪の成立を認めています。また、当初盗品と知らなかったが運搬途中でそれと気づいた場合に、運搬罪が成立するか否かについても、見解が分かれています。
盗品等保管罪
盗品等保管罪は、委託を受けて盗品等を保管する行為を言い、有償・無償を問いません。質物として受け取る場合や担保として受け取る場合、賃貸借として受け取る場合も含みます。また、現実に盗品等を受け取る必要はありますが、本犯から直接受け取る必要はありません。当初保管の際に盗品とは知らなかったが、知情後保管を続けた場合について、運搬罪と同様見解の対立があります。肯定説は本罪を継続犯と考えるものと言えますが、これに対しては保管する物を返還しないという不作為を処罰することとなり、妥当でないとの批判がなされており、追及権の侵害や事後従犯的行為による犯罪促進は移転時に認められるものであるから、盗品性の認識の後に、意思の連絡があってこそ本犯助長性が認められるとして、基本的には本罪の成立を否定する見解も主張されます。
盗品等有償譲受け罪
盗品等有償譲受け罪は、盗品等を、売買、交換、債務の弁済などの名義で対価を支払って取得することを言います。利息付消費貸借や、売渡担保名義で取得した場合も含まれます。
盗品等有償処分あっせん罪
盗品等の有償的な法律上の処分行為を仲介または周旋することを言います。有償・無償を問わず、また、自ら行うか、他人を介して行うか、あるいは本犯名義で行うか、自らの名義で行うかは問いません。本罪の成立には、盗品等が存在することが必要であり、将来取得する物の売買をあっせんしても、本罪は構成しないとされます(最判昭和35年12月13日刑集14巻13号1929頁)。また、あっせん行為をした以上、契約が成立しなくとも本罪が成立するとするのが判例(最判昭和23年11月9日刑集2巻12号1504頁)ですが、これには反対する見解も主張されており、契約成立が必要とする説や、物の現実の移転が必要とする説が主張されています。

罪数・本犯との関係[編集]

本罪における各犯罪類型に該当する行為を相次いで行った場合、原則として包括一罪となります。窃盗犯などが自ら本罪を犯した場合には、共罰的事後行為として不可罰です。これに対して、本犯の教唆犯・幇助犯が本罪を犯した場合については、併合罪説と牽連犯説が対立します。判例(大判明治44年5月2日刑録17輯745頁、最判昭和24年7月30日刑集3巻8号1418頁など)は併合罪としています。

毀棄・隠匿罪[編集]

総説[編集]

毀棄の罪とは、不法領得の意思がなく単に他人の物を侵害する行為を内容とする罪であり、隠匿の罪は、他人の信書の発見を妨げる行為を内容とする犯罪です。刑法では、公用文書等毀棄罪(258条)、私用文書等毀棄罪(259条)、建造物等損壊罪・同致死傷罪(260条)、器物損壊等罪(261条)、境界損壊罪(262条の2)、信書隠匿罪(263条)が定められています。

毀棄の罪は、個人の財産としての物ないし物の効用を保護法益とするものであり、不法領得の意思がない点において領得罪と異なります。毀棄の罪は財産罪であるが、公用文書損壊罪の罪責はむしろ公務の執行を侵害するものと解すべきとされます。

毀棄の意義については、以下の見解の対立があります。

  • 財物の物理的損壊を要求する見解(物理的損壊説)。
  • 財物の効用を害する一切の行為を含むと解する見解(効用侵害説)。判例・通説です。

判例において毀棄とされたものとして、隠匿すること(最判昭和32年4月4日刑集11巻4号1327頁)、公選法違反のポスターにシールを張ること(最決昭和55年2月29日刑集34巻2日56頁)、他人の飲食器に放尿すること(大判明治42年4月16日刑集15巻452頁)などがあります。

器物損壊罪[編集]

器物損壊罪は、公用文書毀棄罪、私用文書毀棄罪及び建造物等損壊罪の客体以外の物について、すべて客体とするものであり、本罪の客体は他人の所有に属する物であり、また自己の物についても262条に該当する場合には本罪が成立します。

本罪にいう物とは、財物のことであり、動物も含まれます(条文上、傷害とも規定されていることがこれを前提としています)。傷害とは、動物を殺傷することを言い、損壊におけると同様に動物としての効用を失わせる行為です。またこれを動物傷害罪という場合もあります。例えば、鳥かごを開けて他人の鳥を逃がしたり、生け簀の柵を外して魚を流出させるのも本罪の傷害にあたります(大判明治44年2月27日刑集17巻197頁)。

本罪は親告罪です(264条)。告訴権者は、物の本権者または物を適法に占有していた者です(最判昭和45年12月22日刑集24巻13号1862頁)。

なお、動物を殺傷等する行為については、特別法として動物の愛護及び管理に関する法律があります。

(参照 w:器物損壊罪w:動物の愛護及び管理に関する法律

建造物損壊罪・同致死傷罪[編集]

建造物損壊罪は、他人の建造物または艦船を損壊したときに成立します。これは、客体の重要性及び人を死傷させる危険性に鑑みて行為者を重く処罰する、器物損壊罪の加重類型と考えられます。

建造物とは、少なくともその内部に人が出入りできるものを言い、土地に定着する屋根や壁を有するものをいいます。敷居や鴨居のように建造物の一部を組成し、建造物を損壊しなければ取り外せないものを損壊する行為は本罪に当たりますが、雨戸などの取り外しうるものを損壊する場合には、本罪でなく器物損壊罪となります。

もっとも学説では、建造物の一部とみられるものであっても、容易に補修可能な部分は器物損壊罪の客体となり得るにすぎないとの見解も主張されています。

本罪にいう損壊に、建造物へのビラ貼りなどが含まれるかは見解が分かれています。判例では、その枚数が少ない場合(最判昭和39年11月24日刑集18巻9号610頁(34枚))につき否定し、多数を張り付けた場合に本罪の成立を肯定しています(最判昭和43年1月18日刑集22巻32頁(50枚、30枚をそれぞれ貼り付けた事例)、最決昭和41年6月10日刑集20巻5号374頁(一回に4・5百枚ないし2千枚を3回にわたり貼り付けた事例))。

学説上は、建造物の美観・威容自体を効用として本罪を肯定する見解も主張される一方で、文化財などの例外を除き本罪の成立は疑問とする見解や、本罪の成立には建造部等の本来の使用を不可能とすることまで必要とする見解も主張されます。

(参照 w:建造物等損壊罪w:文書等毀棄罪w:信書隠匿罪