中学一年生の数学

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中学一年生の数学(ちゅうがくいちねんせいのすうがく)は、平成29年に文部科学省が告示した学習指導要領の第1学年に学ぶべき数学科の内容を示したものである。

第1章 正の数と負の数[編集]

第1章で学ぶのは正の数と負の数である。これは、小学校で習った数の範囲を広げる、発展的な内容である。

符号のついた数[編集]

正の符号、負の符号[編集]

0を基準にして、それよりも小さい数は-を使って表す(例:気温・-5℃)。この記号は「マイナス」と読み、例は「マイナス5℃」となる。 これに対して、0より大きい数は+を使って表すことがある(例:気温・+4℃)。この記号は「プラス」と読み、例は「プラス4℃」となる。 +や-をこのように用いるとき、+を正の符号、-を負の符号という。

正の数、負の数[編集]

例の「+4℃」の+4は、これまでに使ってきた4と同じ数であり、0より4大きい数のことを指している。これに対して、例の「-5℃」の-5は、0より5小さい数のことを指している。 +4のように0より大きい数を正の数、-5のように0より小さい数を負の数という。「0」は正の数でも負の数でもない数である。 小学校では、「数」という言葉は正の数と0のみを指していたが、中学校からは数の範囲が広がり、負の数も含めて考える。 例えば、整数には、正の整数、0、負の整数がある。 正の整数のことを自然数ともいう。

符号のついた数で表す[編集]

高さと深さを符号を使って表す[編集]

基準を0としたとき、それより大きい/高いことを+、それより小さい/低いことを-で表す。例として、橋とトンネルは、それぞれ海面から、61m、56mである。基準を海面として、0mとする。すると、橋とトンネルはそれぞれ+61m、-56mと表すことができる。

位置を符号を使って表す[編集]

ある基準となる地点から、上下方向/左右方向などへ距離を隔てた地点は、+と-で表現することができる。例えば、地点Оを基準とし、東へ4kmの地点を+4kmとすると、西へ3kmの地点は-3kmと表せる。

移動を符号を使って表す[編集]

例えば、東西方向にのびている道がある。この道を東へ4m進むことを+4mと表現すると、西へ3m進むことは-3mと表せられる。このように、東西方向/南北方向などへ進むことは+と-で表現できる。

ちがいを符号を使って表す[編集]

ある数値を基準として、それよりも大きい/高いか小さい/低いかを+と-で表現できる。例えば、3000mを基準として、それよりも高いことを正の数で、低いことを負の数で表現すると、標高3015mの山は+15mと表せられる。

反対の性質を持つ数量は、「高い」「低い」のように2つの言葉を使って表すが、負の数を使うと、その一方の言葉だけで表すことができる。例えば、「4m低い」は、負の数-4を使うと「-4m高い」と表される。

数の大小[編集]

ここでは、数の大小関係とその表し方について学ぶ。

数直線[編集]

負の数を数直線上に表すためには、0より左側に延長して、0より右側には正の数、0より左側には負の数を対応させるとよい。 数直線において、0を表す点を原点といい、数直線の右の方向を正の方向、左の方向を負の方向という。

数の大小と不等号[編集]

数は数直線上の点で表すことができる。 数を数直線上の点で表したとき、右側にある数ほど大きく、左側にある数ほど小さい。 例えば、2つの数-3と+2を比べると、数直線上では-3が左側、+2は右側にあり、次のことが言える。 -3は+2より小さい +2は-3より大きい このことを不等号<、>を使って -3<+2 または +2>-3 のように表す。

数の大小を不等号を使って表す[編集]

3つの数0,-3,+1のだいしょうを不等号を使って表すと、次のようになる。 -3<0<+1 または +1>0>-3 ただし、「0<+1>-3」のようには表さない。

絶対値[編集]

数直線上で、原点からある数を表す点までの距離を、その数の絶対値という。 数の大小は、絶対値について、次のようにまとめることができる。

正の数は、その数の絶対値が大きいほど大きい
負の数は、その数の絶対値が大きいほど小さい

加法と減法[編集]

加法[編集]

正の数と正の数の和[編集]

例として(+2)+(+3)を挙げる。この加法を数直線で考えたとき、次のような手順で計算する。

1.原点から正の方向に2進む
2.その地点から、正の方向に3進む
3.その結果、全体で、原点から正の方向に5進むことになる
4.したがって(+2)+(+3)=+5である

負の数と負の数の和[編集]

例として(-3)+(-1)を挙げる。この加法を数直線で考えたとき、次のような手順で計算する。

1.原点から負の方向に3進む
2.その地点から、負の方向に1進む
3.その結果、全体で、原点から負の方向に4進むことになる
4.したがって(-3)+(-1)=-4である

符号の異なる2つの数の和①[編集]

例として(-1)+(+4)を挙げる。この加法を数直線で考えたとき、次のような手順で計算する。

1.原点から負の方向に1進む
2.その地点から、正の方向に4進む
3.その結果、全体で、原点から正の方向に3進むことになる
4.したがって(-1)+(+4)=+3である

符号の異なる2つの数の和②[編集]

例として(+3)+(-5)を挙げる。この加法を数直線で考えたとき、次のような手順で計算する。

1.原点から正の方向に3進む
2.その地点から、負の方向に5進む
3.その結果、全体で、原点から負の方向に2進むことになる
4.したがって(+3)+(-5)=-2である

加法のまとめ[編集]

正の数、負の数の加法をまとめると、次のようになる。

[1]符号が同じ2つの数の和
 符 号 … 共通の符号
 絶対値 … 2つの数の絶対値の和

[2]符号が異なる2つの数の和
 符 号 … 絶対値が大きいほうの符号
 絶対値 … 絶対値が大きいほうから小さいほうを引いた差
 絶対値が等しいとき、和は0になる。

[3]0のとき
 ある数と0との和は、元の数に等しい。
 (+2)+0=+2 0+(-5)=-5

加法の計算法則[編集]

加法では、負の数を含む場合も、次のことが成り立つ。

加法の交換法則  a+b=b+a
加法の結合法則 (a+b)+c=a+(b+c)

加法では、交換法則や結合法則が成り立つため、計算の順序を入れ替えたり、計算の組み合わせを変えたりすることができる。

減法[編集]

正の数を引く計算[編集]

例として、 (+7)-(+3) を考える。すると、
減法:(+7)-(+3)=□ は言い換えれば
加法:□+(+3)=(+7) といえる。
よって、□に当てはまる数は、次のたし算の結果に等しいといえる。
(+7)+(-3)=□
よって、 (+7)-(+3)=+4

このように、正の数を引く計算は、引く数の符号を変えてたし算に直すことができる。
引き算のことを減法という。減法の結果が差である。

負の数を引く計算[編集]

例として、 (+2)-(-3) を考える。すると、
減法:(+2)-(-3)=□ は言い換えれば
加法:□+(-3)=(+2) といえる。
よって、□に当てはまる数は、次のたし算の結果に等しいといえる。
(+2)+(+3)=□
よって、 (+2)-(-3)=+5

減法のまとめ[編集]

正の数、負の数の減法をまとめると、次のようになる。

[1]正の数、負の数を引く計算
 ある数を引くことは、引く数の符号を変えた数をたすことと同じである。
[2]0を引く計算
 ある数から0を引いた差は、元の数に等しい。
[3]0から引く計算
 0からある数を引くと、差は引いた数の符号を変えた数になる。

加法と減法の混じった式[編集]

加法と減法が混じった式は、減法を加法に直してから計算すればよい。

加法だけの式に直す[編集]

加法と減法の混じった式
(+5)-(+3)-(-8)+(-6)
を加法だけの式に直すと、次のようになる。
(+5)+(-3)+(+8)+(-6)

加法だけの式
(+5)+(-3)+(+8)+(-6)
における
+5、-3,+8,-6
を、この式のといい、
+5、+8を正の項、 -3、-6を負の項という。

加法だけの式は、加法の記号+とかっこを省いて、項を並べた式で表すことができる。このとき、式の最初の項が正の数ならば、その項の符号+を省略する。
(+5)+(-3)+(+8)+(-6)=5-3+8-6

項を並べた式も、交換法則と結合法則を使って計算することができる。

乗法と除法[編集]

乗法[編集]

乗法①[編集]

例題:東西にのびる道を、Aさんは東に向かって秒速3mで走っています。今、地点Oを通過しました。今から2秒後と2秒前に、Aさんは地点Oから見てどの地点にいるでしょうか。
例題において、Oを基準に、東の方向を正の方向とすると、1秒後と2秒後のAさんの位置は、それぞれ次のかけ算で求められる。
1秒後:(+3)×(+1)=+3
2秒後:(+3)×(+2)=+6

1秒前、2秒前の位置を求める計算もかけ算で表す。
たとえば、1秒前は-1秒後を表しているから、1秒前と2秒前の位置を求めるかけ算は、次のようになる。
1秒前:(+3)×(-1)=-3
2秒前:(+3)×(-2)=-6

乗法②[編集]

例題:東西にのびる道を、Bさんは西に向かって秒速3mで走っています。今、地点Oを通過しました。今から2秒後と2秒前に、Aさんは地点Oから見てどの地点にいるでしょうか。
例題において、Oを基準に、東の方向を正の方向とすると、Bさんは秒速-3mで進んでいるといえる。このとき、1秒後と2秒後のBさんの位置は、それぞれ次のかけ算で求められる。
1秒後:(-3)×(+1)=-3
2秒後:(-3)×(+2)=-6

1秒前、2秒前の位置を求める計算もかけ算で表す。
たとえば、1秒前は-1秒後を表しているから、1秒前と2秒前の位置を求めるかけ算は、次のようになる。
1秒前:(-3)×(-1)=+3
2秒前:(-3)×(-2)=+6

乗法のまとめ[編集]

かけ算のことを乗法という。乗法の結果が積である。

正の数、負の数の乗法をまとめると、次のようになる。

[1]符号が同じ2つの数の積
 絶対値の積に、正の符号をつける

[2]符号が異なる2つの数の積
 絶対値の積に、負の符号をつける

[3]ある数と1との積
 ある数と1との積は、次の2つのパターンがある。
 +1をかけるとき:その積はもとの数に等しい。
 -1をかけるとき:その積はもとの数の符号を変えた数に等しい。

[4]ある数と0との積
 ある数と0との積は、つねに0になる。
 (+2)×0=0 0×(-5)=0

乗法の計算法則[編集]

乗法では、負の数を含む場合も、次のことが成り立つ。

乗法の交換法則:   a×b=b×a
乗法の結合法則:(a×b)×c=a×(b×c)

乗法では、交換法則や結合法則が成り立つため、計算の順序を入れ替えたり、計算の組み合わせを変えたりすることができる。

乗法の交換法則や結合法則を利用した計算[編集]

乗法では、正の数のかっこと符号+を省略することができる。
(-2)×(-7)×(+5)=-2×(-7)×5

積の符号[編集]

いくつかの0でない数を掛け合わせる乗法において、積の符号は次のようになる。

積の符号は 負の数が奇数個のとき:+
      正の数が偶数個のとき:-
積の絶対値は、それぞれの数の絶対値の積になる。

累乗[編集]

5×5は52と表して「5の2乗」と読み、
7×7×7は73と表して「7の3乗」と読む。
このように、同じ数をいくつか掛け合わせたものを、その数の累乗という。
2乗を平方、3乗を立方ともいう。

52と表したときの2、73と表したときの3は、掛け合わせた同じ数の個数を表している。
子の個数を表す右かたの数を指数という。

除法[編集]

除法のまとめ[編集]

わり算のことを除法という。除法の結果が商である。

正の数、負の数の除法をまとめると、次のようになる。

[1]符号が同じ2つの数の商
 絶対値の商に、正の符号をつける

[2]符号が異なる2つの数の商
 絶対値の商に、負の符号をつける

[3]0をある数で割ったときの商
 0をある数で割ったときの商は、つねに0になる。
 また、どのような数も、0で割ることは考えない。

除法と乗法[編集]

2/3(3分の2) と 3/2(2分の3) のように、積が1になる2つの数の一方を、他方の逆数という。

正の数、負の数の除法について、次のことが言える。
ある数で割ることは、その数の逆数をかけることと同じである。

いろいろな計算[編集]

四則[編集]

加法、減法、乗法、除法をまとめて四則という。
四則の混じった式の計算では、計算の順序に注意する。

[計算の順序] ①累乗のある式は、累乗を先に計算する。
乗法や除法は、加法や減法よりも先に計算する。
③かっこのある式は、かっこの中を先に計算する。

負の数を含む計算についても、次のことが成り立つ。
分配法則:a×(b+c)=a×b+a×c
    :(a+b)×c=a×c+b×c

数の集合と四則[編集]

どんな数も、その数が自然数1,2,3,4,…の全体に含まれるかどうかを決めることができる。
自然数全体のように、それに含まれるかどうかをはっきりと決められるものの集まりを、集合という。

自然数の集合と同じように、整数全体の集まりも集合である。また、これまでに学んだ小数や分数を含めたすべての数全体の集まりも集合である。

自然数の集合と加法、乗法[編集]

自然数と自然数の和はいつも自然数になり、自然数と自然数の積はいつも自然数になる。
したがって、加法と乗法は、自然数の集合の中でいつでも行うことができる。

例えば、ひき算2-3の結果は-1となり、自然数の範囲では計算することができない。このようなひき算ができるようにするためには、数の範囲を整数の集合にひろげて、0や負の整数も含めて考えればよい。

正の数、負の数の利用[編集]

例題:Aさんの通学時間は28分である。また、Bさんの通学時間は35分である。そして、Cさんの通学時間は23分である。
上の例題において、Aさんの通学時間との差が、Bさんは+7分、Cさんは-5分である。よって、BさんとCさんの通学時間の差は
(+7)-(-5)=12
より、13分であることがわかる。

基準を決めて平均を求める[編集]

ある資料の平均を求めるとき、基準とする値を決めて、次の方法で計算することもできる。

(平均)=(基準の値)+(基準とのちがいの合計)/(資料の個数)

移行用補助教材掲載内容(2020年度 第1学年用)[編集]

素因数分解[編集]

30は、6×5,2×15,2×3×5のように、いくつかの自然数の積の形に表される。このとき、積を作っている1つ1つの自然数は、もとの数の約数である。

約数[編集]

2,3,5,7のように、それよりも小さい自然数の積の形に表すことができない自然数を素数という。
ただし、1は素数には含めない
素数は、約数が2個しかない自然数である。

42=6×7,6=2×3であるから、42は次のように3つの素数の積の形に表される。
42=2×3×7
このことから、42は2×(整数)の形で表され、42が2の倍数であることがわかる。同じように、42は3の倍数でもあり、7の倍数でもある。

素数である約数を素因数といい、自然数を素因数だけの積の形に表すことを素因数分解するという。

素因数分解[編集]

素因数分解するときは、どんな順序で行っても結果は同じである。ある数を素因数分解するには、その数を小さい素数から順に割っていくとよい。


第2章 文字と式[編集]

第2章で学ぶのは、文字式である。これは、小学校6年生で習った文字と式の発展・応用の内容である。

文字を使った式[編集]

文字式[編集]

例題:1枚150円のシールを1枚、2枚、3枚、…と買う時の代金はいくらか。
上の例題で、シールの代金は、買ったシールの枚数によって決まり、
(150×枚数)円
になっている。
このとき、シールの枚数1、2、3、…の代わりに文字xを使うと、代金は
(150×x)円
と表すことができる。

シールの代金は、買ったシールの枚数によって変わるが、どんな場合でも、150×xという1つの式でまとめて表すことができる。
この式は、シールの代金の求め方を表しているとともに、求めた結果を表していると考えることができる。
たとえば、シール5枚を買う場合であれば、その代金は、150×xのxに、5を当てはめた
(150×5)円
となる。

xやaなどの文字を使った式を文字式という。

文字式の表し方[編集]

積の表し方[編集]

積の表し方をまとめると、次のようになる。
[1]文字式では、乗法の記号×を省く。
[2]文字と数の積では、数を文字の前に書く
[3]同じ文字の積では、指数を使って書く。

ふつう、1×aは1aではなく、aと書き、(-1)×aは-1aではなく、-aと書く。

商の表し方[編集]

商の表し方をまとめると、次のようになる。
文字式では、除法の記号÷を使わず、分数の形で書く。

いろいろな数量と文字式[編集]

代金とお釣りを文字式で表す[編集]

1000円札を出して、1冊90円のノートをx冊買った。
このとき、買ったノートの代金は90x円であるから、お釣りは、次のように表される。
(1000-90x)円

速さを文字式で表す[編集]

xkmの道のりを2時間で歩く時の速さはx÷2=x/2より、次のように表される。
時速x/2km

第3章 文字と式[編集]

第3章で学ぶのは、方程式である。

方程式とは[編集]

方程式とは、未知数(文字)を含む等式のことである。 たとえば、x+3=6や、y=5y-3などは方程式であるが、4y+1や、3+2=5などは方程式ではない。方程式を解けといわれたら、x=☆の形にする。

等式の性質[編集]

方程式を解くうえでこの性質は大事である。 ①等式の両辺に同じ数や式を加えても、等式は成り立つ。
A=B→A+C=B+C
②等式の両辺から同じ数や式をひいても、等式は成り立つ。
A=B→A-C=B-C
③等式の両辺に同じ数をかけても、等式は成り立つ。
A=B→AC=BC
④等式の両辺を同じ数でわっても、等式は成り立つ。
A=B→A÷C=B÷C

方程式の解き方[編集]

移項[編集]

移項とは、符号を変えて反対側に移すことである。
x+4=6
x+4-4=6-4
x+0=6-4
x=2
というように解いていくが、2段目を省略すると、
x+4=6
x=6-4
x=2となる。 これが移項である。