法人

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法人とは、生物としての人ではないが、法により権利能力を与えられたもののことをいいます。

民法では、概ね第一編総則 第三章法人、の部分になります。ただし、法人については特別法による規律が多く、例えば株式会社(など)に関しては会社法の対象となっています。その他様々な特別法において、法人の規定が置かれています。

また、2008年12月1日に一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(略称、一般社団・財団法人法)が施行されるのに伴い、民法の法人に関する規定のほとんどは削除され(38条から84条までが現行民法では削除となっています。)、その他もこれに合わせて改められました。また同時に、中間法人法も廃止され、既存の中間法人は一般社団法人に移行することとなりました。既存の公益法人は特例民法法人として、これも5年以内には新制度へと移行することとされています。これらの改正は、公益法人制度改革の一環として制定されたものであり、より円滑に民間が公共のために活動できることを目指すものです。

このように変更があり、民法で学習する法人もかつてのものから変更が加えられることとなりますが、基本的な考え方などについては、大きく異なるものではありません。

(参照 w:公益法人制度改革w:一般社団法人及び一般財団法人に関する法律

この講座は、民法 (総則)の講座の一部です。前回の講義は自然人、次回の講義は法律行為です。

社団と財団[編集]

一定の目的のための人の集団を社団と言い、これに対して一定の目的のための財産の集団を財団と言います。このような社団や財団には、株式会社や組合、公益法人、財団法人などのように法人格を付与されたものも、また法人格を持たないもの(自治会や同窓会、サークルなど)も含まれます。

日本国憲法では結社の自由が保障されており、基本的に社団などを設立するのは自由とされています。

(参照 w:社団w:財団

法人[編集]

上記のように自由に集団を作ることが出来る一方で、それに法人としての地位を与えるかどうかは政策上の問題であると考えられています。法人として認めるとその構成員などとは別の主体となるため、法律関係を簡単・明確にでき(例えば事務所の所有など。構成員の共同所有などとする面倒がありません。)、また構成員の変更に関わらず一つの主体として事業を継続できますが、財産が分離され原則として法人の権利義務は構成員個人とは関係しないこととなり(例えば会社に貸したお金を従業員に返せとは言えません)、また構成員などの権利義務は法人とは関係しない(構成員の借金を法人に返せとも言えない)こととなるため、財産隠しや脱税・詐欺など不法な目的で利用される危険もあり、また実際に利用されています。

日本の民法では、33条において「法人は、この法律その他の法律の規定によらなければ、成立しない。」と定めており、このように法律によらなければ法人が設立できないというものを、法人法定主義と言います。

現在法人として認められているものとして、株式会社や持分会社(会社法)、一般社団・一般財団(一般社団・財団法人法)、各種の組合(農業協同組合法、消費生活協同組合法など)、宗教法人(宗教法人法)、社会福祉法人(社会福祉法)、医療法人(医療法)、弁護士法人(弁護士法)、特定非営利活動法人(いわゆるNPO法人。特定非営利活動促進法)など、多数のものがあります。また、国や地方公共団体も一つの法人です。

社団に法人格が認められたものを社団法人、財団に法人格が認められたものを財団法人と呼びますが、一般用語としては、社団法人といった場合には公益社団法人を、財団法人といった場合には公益財団法人を指して用いられており、注意が必要です。

(参照 w:法人w:社団法人w:財団法人

法人本質論[編集]

前記のように法人格が認められると権利能力を持ち、一つの法的主体として扱われますが、このような法人・法人制度の本質は何であるかにつき見解の対立があります。

とはいえ、このような議論はかつて法人が広く登場しはじめたころからのもので、確かにどのように法人を捉えるかによって法人にまつわる問題の解決方法にもいくらか影響はするものの、どれを採用するからと言って直ちに問題解決に結びつくものでもなく、現在ではさほどの意味はないともいわれています。

法人擬制説
法人擬制説は、法が特に人格を擬制したのが法人であるというもの。本来権利主体となるのは自然人だけであるところ、法人は特別に法が人として扱うと定めたと言うだけのものであり、いかなる実体が法人として認められるかは法の裁量によると考えます。
法人実在説
法人実在説は、法人とはそれ自体が現実に存在する、社会的実在性を持つ集団であり、それに法が権利主体としての資格を与えたものと考えます。

(参照 w:法人本質論

法人の設立[編集]

一般社団法人及び一般財団法人は、登記のみによって法人格を取得することが出来ます。このように、法に定める要件さえ満たしていれば、設立の申請や行政府による審査などを必要とせずに法人格を与えるものを準則主義といいます。

設立時の国家による干渉の違いによって分類すると、以下のようになります。

特許主義
設立のために特別な法律が制定される必要があるもの。日本銀行や日本郵政公社・都市基盤整備公団などの公社・公団・公庫。
許可主義
法の定める要件を備え、主務官庁の許可を得る必要があるもの。許可をするかどうかは主務官庁の裁量による。 公益社団法人・公益財団法人。
認可主義
法の定める要件を備え、主務官庁の認可を得る必要があるもの。主務官庁は認可をするかどうかの裁量はない。学校法人・医療法人・社会福祉法人・農業協同組合など。
認証主義
法の定める要件を備えて主務官庁に申請し、主務官庁は提出書類に基づき法の要件を備えているかどうか確認するもの。特定非営利活動法人(NPO法人)・宗教法人。
準則主義
法の定める要件を具備すれば当然に法人となるもの。株式会社、労働組合、弁護士会、中間法人など。

また、951条は、「相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。」としており、これにより、相続人がいるかどうか分からない相続財産は、当然に法人となります。

一般社団法人の設立では、社員となろうとするもの2名以上が共同して定款(その団体の根本原則。法人の目的や名称、所在地などを定めたもの)を作成する必要があり、一般財団法人では定款を定め、かつ300万円以上の財産が拠出されなければなりません。定款は公証人の認証を受ける必要があります。

また法人の組織として、一般社団法人では意思決定機関である社員総会と、執行機関である理事を必ず置かなければなりません。理事会と内部監査機関である監事は任意となっていますが、200億円以上の負債がある場合には会計監査人を必ず置かなければならず、会計監査人、もしくは理事会を置く場合には監事も必須となっています。

一般財団法人では、評議員、評議員会、理事、理事会及び監事を置かなければならず、200億円以上の負債がある場合には会計監査人も置かなければなりません。

法人の能力[編集]

法人には権利能力が与えられますが、全く自然人と同じというわけではなく、自然人と比較すると制限されたものが認められます。まず、法人はその性質上の制限を受け、身分上の法律行為(婚姻・養子縁組など)や、実体があることを前提とした法律行為(労務の提供など)の主体となることは出来ません。また、法令上、制限が加えられているものもあります。このような制限に反した行為は無効と考えられます。さらに、法人はその目的により制限を受けます。

目的による制限については、判例・通説はこれを権利能力に対する制限としており、これに反すれば権利能力がないため無効としますが、目的による制限は行為能力に対する制限と捉える見解も主張されています。

法人が定款に定められた目的範囲外の行為を行った場合、法人やその構成員の利益が害される可能性があり、また特に行政府等の許可・認可によるような団体では、目的範囲外のことでも自由に行い得るとすると(そのような目的に反した団体には解散を命じるなどの制度もありますが)、許可や認可を必要とした意味が損なわれ、問題があると考えられます。しかし一方で、容易にある行為が無効とされると、法人の目的は現実的には、容易にわかるものではなく、取引相手の信頼や取引の安全が害されるおそれがあります。

現在の判例では、目的による権利能力の制限に関しては非常に緩く解釈され、判断がなされています。

判例はまず、目的の範囲とは定款に明示された行為に限らず、その目的を遂行するのに直接または間接に必要な行為一切を含むといいます。そして、ある行為が目的の範囲内かどうかは、その目的遂行に必要だったかどうかを問わず、行為を客観的・抽象的に見て判断されるとしています。

このため、営利法人についてはほとんど無制限と言ってよい状態であり、利益追求行為(会社の存続に資するとされています)のほか一般に会社に求められる社会貢献の類(寄付など)であれば目的の範囲内としています。これに対して、非営利法人についてはその目的による制限は比較的厳格に解されており、問題となる行為について目的遂行上の必要性や、構成員全体の利益などを考慮することによって、判断しています。

これら目的による制限については、会社法の講座なども参照してください。

(参照 w:法人の法的主体性

法人格否認の法理[編集]

法人格否認の法理とは、たとえ形式上法人格を有していても、実体として法人とするのにふさわしくないものについて、その法人格を否定して実体の部分(たとえ株式会社となっていても、実体としては個人事業ならその個人事業者、形だけの子会社なら実際に活動しているその親会社など)に権利義務を帰属させようという考え方のことです。

実体のない法人を利用して債務を免れるような行為に対処するため考えられています。

主として会社について問題とされているものであり、これについても会社法の講座を参照してください。

権利能力なき社団[編集]

権利能力なき社団(財団の場合には権利能力なき財団)とは、前記の法人格否認の法理とは逆に、法人格は持っていないもののその実体として社団があリ、またその名前・外観において実際に社会で活動している、実質的に法人と同様のものと認められる社団について、法人に関する規定を類推適用するなどして、実体に合う形で法律関係をとらえようというものです。これは現在では判例・通説上も認められています。具体的には、町内会や大学のサークルなどがこれに該当する場合があります。

ただ、かつては、日本で非営利法人が法人格を得る道は限られており、営利法人でなくまた公益も目的としない団体が数多く権利能力なき社団として存在しましたが、中間法人法の制定(2001年6月公布、2002年4月施行)及び一般社団・財団法人法の施行(中間法人法は廃止)と、法整備が進められることによって、非営利法人も法人格の取得が容易になってきており、権利能力なき社団についての考え方も影響を受けることが考えられます。

(参照 w:中間法人

定義[編集]

どのような集団であれば権利能力なき社団と認められるかについて、判例(最判昭和39年10月15日など)では、以下の要件を満たすものであれば権利能力なき社団と認めるものとしています。

  1. 団体としての組織を備えていること。
  2. 多数決の原則がおこなわれていること。
  3. 構成員の変更にかかわらず、団体が存続していること。
  4. 組織により代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定していること。

ただし、この要件(だけ)が全ての判例において検討され権利能力なき社団か否かが判断されているのかということについては異論もあり、社団の財産が存在することが重視されているのではないか、などとも指摘されています。

効果[編集]

権利能力なき社団と認められることにより、以下のような効果が認められます。

社団財産の区別と総有
社団の財産はその構成員の財産から区別され、社団財産は構成員全員に総有(的)に帰属するものとされています。総有では、共同所有者各人はその財産を利用することが認められるだけで、持分を観念することが出来ないとされています。したがって各構成員は持分の処分や分割請求、持分権の払い戻しも出来ません(最判昭和32年11月14日)。
対外的債権・債務関係
対外的な債権・債務も各構成員に総有的に帰属し、団体が負う債務については団体財産だけがその引き当て財産となり、取引相手は団体の構成員個人に対して直接履行を請求することは出来ないとされています(最判昭和48年10月9日)。
登記
不動産の登記に関して、法人格を持たない以上団体名義での登記はできず、本来は構成員の共有での登記が望ましいものの現実にはそれは難しいため、不動産登記は代表者の個人名義で可能とされています。ただし、不動産登記には形式審査主義がとられ、記載事項が実際に正しいかどうか審査されないため、肩書などをつけることを認めると、肩書きが悪用されることも考えられ、肩書き等をつけて登記することは認められていません。なお、代表が変わった場合には所有権移転登記をすることとなります。

(参照 w:権利能力なき社団