公務の執行を妨害する罪

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ここでは、公務の執行を妨害する罪として、公務執行妨害罪、職務強要罪、強制執行妨害罪、談合罪などについて扱います。これらは、国家作用に対する罪の一部であり、また国家的法益に対する罪の一部です。

この講座は、刑法 (各論)の学科の一部です。

前回の講座は、国家の存立に対する罪、次回の講座は、汚職の罪です。

公務の執行を妨害する罪[編集]

総説[編集]

公務の執行を妨害する罪の行為の客体は公務員ですが、公務の執行を妨害する罪の保護法益は、公務、すなわち国または地方公共団体の作用であり、刑法では、公務執行妨害罪(95条1項)、職務強要罪・辞職強要罪(95条2項)、封印等破棄罪(96条)、強制執行妨害罪(96条の2)、競売等妨害罪(96条の3第1項)、談合罪(96条の3第2項)が定められています。

公務員・公務所[編集]

公務の執行を妨害する罪や、その他の国家作用に対する罪においては、公務員・公務所の概念が重要となります。

7条1項は、「この法律において、「公務員」とは、国または地方公共団体の職員その他の法令により公務に従事する議員、委員、その他の職員をいう」と定めています。

ここでいう法令とは、法律・命令・条例のほか、法令に根拠を有する訓令、内規の類も含まれます。なお、判例(最判昭和22年2月28日刑集4巻2号268頁)は単に行政庁内部の組織作用を定めたにすぎない訓令・内規も法令にあたるとしています。また、「法令により」とは、その資格が右の法令に根拠を有するという意味であり、法令の明文上特にその職務権限の定めがあることを要しません(大連判大正11年7月22日刑集1巻397頁)。

公務員は、公務に従事するものでなければなりせん。そして公務とは国または地方公共団体の事務を言い、必ずしも権力的事務であることを要せず、交通事業のような非権力的・私的事業でもよいとされます。これに対し、公法人の事務については、学説は分かれており、一律に公務とする見解や、公法人の職務の性質に従って判断すべきとする見解、法律上、みなし公務員規定が置かれている場合を限度として公務員とする見解などがあります。判例(大判昭和11年1月30日刑集15巻34頁など)は、公法人・公共団体の職員も一律に公務員とするものと解されます。

議員とは、国または地方公共団体の意思決定機関である合議体の構成員を言い、衆・参両議院の議員、地方公共団体の議会の議員をいいます。委員とは、委員とは、法令に基づき、任命・選挙・嘱託によって一定の公務を委任された非常勤の者を言い、各種審議会委員、教育委員、農業委員などが挙げられます。職員とは、法令上の根拠に基づいて国または地方公共団体の機関として公務に従事する者をいいます(最判昭和25年10月20日刑集4巻10号2115頁)。意思決定機関に限らず、それを補助する地位にあるものも含まれ、また職制上、職員と呼ばれるものであるか否かを問わず、事務員などもここでいう職員です(最決昭和30年12月3日刑集9巻13号2596頁)。

また、およそ公務員であればすべて刑法上の公務員としてよいかが問題とされ、以下の見解が主張される。職員は精神的・知能的な労働に属する事務を担当するものであることを要し、用務員などのような単純な機械的・肉体的労働に従事するにすぎないものは職員でないとするのが通説・判例(大判昭和12年5月10日刑集16巻717頁)です。もっとも、その内容は一定ではなく、何が単純な機械的・肉体的労働であるかには変化が見られます。郵便集配人について、戦後の判例(最判昭和35年3月1日刑集14巻3号209頁)は単なる機械的・肉体的労働ではないとして公務員としましたが、大審院の判例(大判大正8年4月2日刑録25輯374頁)では公務員でないとしていました。これに対し、単純な機械的・肉体的労働であるか否かは職員の範囲を画定する要素にはならないとする見解も有力に主張されています。

公務所については、7条2項において、「官公庁その他公務員が職務を行うところをいう」と定められており、この「行うところ」とは、有形の場所・建造物ではなく官公署その他の組織体または機関を意味するものと解されます。

公務執行妨害罪[編集]

総説[編集]

公務執行妨害罪の保護の対象は公務それ自体ですが、行為の客体は公務員です。外国の公務員は本罪の対象となるものではありません(最判昭和27年12月25日刑集6巻12号1387頁)。

本罪の行為は、公務員が職務を執行するにあたり、これに対し暴行・脅迫を加えることです。本罪は抽象的危険犯であり、現実に妨害がなされたことは要しません(最判昭和33年9月30日刑集12巻13号3151頁)。

本罪の故意が認められるには、行為の客体が公務員であること、およびその職務執行に際して暴行・脅迫を加えることの認識を必要とします。

職務の執行[編集]

まず、職務について以下の見解が主張されます。

  • 権力的公務ないし非現業的公務に限るべきとする見解。
  • すべての公務が含まれるとする見解。判例(大判明治44年4月17日刑録17輯601頁、最判昭和53年6月29日刑集32巻4号816頁)・通説の立場です。

公務は民間と異なる意義を持ち、業務妨害罪による暴行・脅迫に対してのみ保護されるべきものではないとして、すべての公務を含むものと解するのが通説となっています。

職務は、抽象的・包括的に把握されるべきでなく、具体的・個別的に特定されていることを要します(最判昭和45年12月22日刑集24巻13号1812頁(駅助役が点呼を終えて数十メートル離れた場所へ事務引き継ぎに赴く途中暴行を受けた例について、否定))。そして「職務を執行するに当たり」とは、職務を執行する際という意味であり、本来の職務と場所的・時間的に接着しており、実質的に見て職務との一体性が認められることが必要となります。

判例では、職務に着手しようとしている場合(最判昭和24年4月26日刑集3巻5号637頁)や、一時中断中であっても職務の性質などにより継続した一連の職務とみられる場合(最判昭和53年6月29日刑集32巻4号816頁(行為者の不法な目的をもった行為により一時中断せざるをえなくなった場合につき、職務執行が一見中断ないし停止されているかのような外観を呈していたとしても、このような場合に当該公務員が任意・自発的に職務の執行を中断し、その職務執行が終了したものと解するのは相当でないとしました))も、「職務を執行するに当たり」に該当するとしています。

職務執行の適法性[編集]

職務の執行は適法であることを要します。適法性は、構成要件上明示されておらず、これを問わないとする説もありますが、通説では、本罪は公務を保護するものであり、違法な公務員の行為まで保護するとすればそれは公務ではなく、公務員そのものの身分・地位を保護することとなるから本罪の趣旨に反するとして、本罪の成立には適法性の要件が充たされることが必要としています。この職務行為の適法性については、構成要件要素とするのが通説です。

適法性を充たすためには、当該行為がその行為をなした公務員の抽象的(一般的)職務権限に属すること、当該公務員がその職務行為を行う具体的職務権限を有すること、その職務の執行を有効にする法律上の重要な方式を履践していること、の3つの要件を充たす必要があります。

抽象的職務権限とは、公務員が法令上行い得る職務の範囲として定められたもののことです。必ずしも法令に明示されていることを要しません。例えば無灯火で自転車に乗っていたものに巡査が説諭を加えることについても抽象的職務権限が認められます(大判大正4年10月6日刑録21輯1441頁)。

具体的職務権限とは、現実にその職務を執行する権限のことです。

そして方式の履践とは、法律上重要な要件・方式を履んでいることであり、これが欠ければ適法性が充たされません。もっとも一般的に、軽微な要件・方式の違背があるからといって、すべてこれを職務行為として認めないというのは妥当でないとされており、どのような場合に違法なものとなるかについては、以下の見解が主張されています

  • 任意規定や訓示規定に反するに過ぎない場合には適法とする見解。
  • 執行行為そのものが無効とならない限り適法とする見解。
  • 対象者の利益保護に影響を与えない要件・方式の違背であれば適法であるとする説。多数説です。

また、適法性の判断基準について、以下の見解があります。なお判断の時点については、こう維持を基準として判断すべきというのが、判例・通説の立場です。

  • 公務員がその職務の執行と信じて行ったかどうかによるという見解(主観説)。
  • 裁判所が法令に定める要件に従いながら、客観的に決めるべきとする見解(客観説)。通説です。
  • 一般人の見解を基準として定めるべきとする見解。

適法性の錯誤[編集]

公務員の職務執行が違法なものと誤信して暴行・脅迫を行った場合、すなわち適法性に錯誤があった場合については、これをすべて事実の錯誤とする見解や違法性の錯誤とする見解もありますが、事実の錯誤と違法性の錯誤の二つの場合があるとし、職務の適法性を基礎づける事実の錯誤がある場合には故意を阻却し、適法性の評価自体の錯誤がある場合には違法性の錯誤とする見解が多数の見解となっています。

暴行・脅迫[編集]

本罪の行為は、暴行または脅迫です。ここで、暴行・脅迫は本罪の性質上、職務執行の妨害となるべき程度のものであることを要し、またそれで十分と考えられます。そこで、職務執行を妨害するに足りる程度の暴行である限り、直接に公務員の身体に対して加えられる必要はなく、公務員に向けられた暴行で足ります。

そのため、公務員の職務の執行に密接不可分な関係において関与する補助者に加えられる暴行も、その公務員に対する暴行となり得ます(最判昭和41年3月24日刑集20巻3号129頁)。もっとも、単なる不法な有形力の行使は本罪にいう暴行には当たらず、物に対して加えられる有形力が間接的に公務員に物理的に影響を与えるものであることが必要と考えられる。この種の暴行を間接暴行と言い、学説上は、そのためにも公務員の面前で行われることを要する、などといわれます。

判例(最判昭和33年10月14日刑集12巻14号3264頁)では、差し押えにより自動車に積み込まれた密造酒入りの容器を鉈で破壊し、内容物を流出させた行為を本罪にいう暴行としています。

職務強要罪・辞職強要罪[編集]

職務強要罪・辞職強要罪は、公務執行妨害罪が職務の現実の執行に向けられるのに対して、公務員の将来の職務執行に向けられる点でそれと異なります。広く公務員の職務行為の自由を保護することにより、公務の公正かつ円滑な執行を保護するものと考えられます。

本罪の行為は、公務員に対し、暴行・脅迫を加えることです。その内容については、公務執行妨害罪と同様です。本罪は、法に定められた一定の目的で暴行・脅迫を加えることにより成立し、その結果として目的とされた事態が発生することは必要でありません。

本罪の目的は、ある処分をさせるため、ある処分をさせないため、もしくはその職を辞させるため、という3つがあります。

ある処分とは、広く公務員が職務上なしうる行為を言います。判例(最判昭和28年1月22日刑集7巻1号8頁)は、公務員の職務に関係ある処分であれば足り、職務権限内の処分であると職務権限外の処分であるとを問わない、とします。学説上は、これを肯定する見解も主張される一方で、本罪も公務員の職務の円滑・公正な執行を保護する罪である以上、当該公務員の一般的職務権限内に限るべきとする見解も多く主張されています。

「ある処分をさせ」とは、一定の作為を強要することを言い、違法な処分を強要する場合だけでなく、適法な処分を行わせる目的の場合を含まれます。もっとも、これには反対の見解も主張されています。また「させないため」とは、公務員に一定の不作為の処分を強要する目的を言います。これには、公務員の違法な処分をさせない目的は含まれません。

「職を辞させるため」とは、当該公務員を自ら退職させることを言い、公務の妨害の手段として辞職させる目的であるか否かは問われません。この目的の場合を辞職強要罪と呼びます。

封印等破棄罪[編集]

総説[編集]

封印等破棄罪は、封印もしくは差押の表示によって実現される強制実行の適正かつ円滑な実施を保護するものであり、本罪の客体は公務員の施した封印または差押えの表示です。

本罪の客体としての封印とは、物の任意の処分を禁止するために公務員がその動産・不動産に施した封緘その他これに準ずる設備を言います。封印の方法は、開閉部分の封鎖に限られるものでなく、また必ずしも公務員の印章が用いられていることを要せず、任意の処分を禁止する意思が表示されていれば足ります(大判大正6年2月6日刑録23輯35頁(穀類差押えのため、俵に縄張りし、これに必要事項を記入した紙片を巻きつけた事例))。

差押えとは、公務員が物の占有を強制的に取得する処分を言います。動産差押えのほか、民事保全法の規定による仮差押・仮処分も、占有移転が認められる限りにおいて含まれますが、他人に一定の作為や不作為を命ずる処分、民事執行法の規定による不動産の差押え、債権の差押えは、占有移転という性格を持たず本罪の差押えには当たりません。差押えの表示とは、公務員が職務上自己の保管に移すべき物に対し占有を取得する強制処分を行うに当たり、占有取得を明示するために施す封印以外の表示を言い、貼り紙、立て札などです。差押物自体になされる必要はありません。

適法性[編集]

本罪も公務の執行を妨害する罪の一種であり、封印・差押の表示は適法であることを必要とします。また本罪が成立するためには、行為の時点において有効・適法な封印・差押の表示がなければなりません。そのため、封印・差押えの効力はあっても、差押えの表示としての効力が失われているときには、本罪の客体となりません(最判昭和29年11月9日刑集8巻11号1742頁)。

表示の有効性については、表示が有する公示性の有無によって決すべき、などとされます。判例(最決昭和62年9月30日刑集41巻6号297頁)では、差押えの公示札が包装紙で覆われ、ビニールひもが掛けられていた事案につき、これらは容易に除去して記載内容を明らかにできたことから、その効用は一部減殺されてはいるものの滅却には至っていないとして、本罪の成立を認めています。もっとも、この判例に対しては反対する見解も主張されます。

行為・故意[編集]

本罪の行為は、封印または差押えの表示を損壊し、またはその他の方法をもって無効とすることです。損壊とは、物理的に毀損・破壊または除去して、その事実上の効力を滅却することを言います。またその他の方法で無効にしたとは、損壊以外の方法により、その事実上の効力を滅却することを言います。なお法律上の効力を失わせるという意味ではありません(大判昭和12年5月28日刑集16巻811頁(差押え物件を搬出・売却する行為))。

また本罪の故意は、行為の際に封印または差押えの表示が存在することを認識して行為する意思です。適法性の錯誤については、公務執行妨害罪と同様見解が分かれます。判例(最判昭和32年10月3日刑集11巻10号2413頁)では、市収税吏員の国税徴収法に基づく滞納処分による差押について、当該差押え調書中に重要な事項の記載を欠いているから当該差押え及び封印は法律上無効であると誤信した場合につき、故意を阻却しないとしています。

強制執行妨害罪[編集]

総説[編集]

本罪の性格をめぐっては、以下の見解があります。

  • 第一次的には公務としての強制執行の適正な運用を図りつつ、第二次的に債権者の保護を考慮するものであるとする見解。
  • 第一次的には債権者保護を図りつつ、第二次的に強制執行の適正な運用を考慮する罪であるとする見解。判例(最判昭和35年6

月24日刑集14巻8号1103頁)の立場です。

本罪の主体には特に制限はなく、債務者に限らないとするのが判例(大判昭和18年5月8日刑集22巻130頁)です。もっともこれに対して本罪の性格から、強制執行を免れる者、すなわち債務者・物の所有者・占有者など客観的に強制執行を受けるおそれのある者に限るべきとの見解も主張されています。

本罪も、抽象的危険犯であると解されます。

目的[編集]

本罪は、強制執行を免れる目的で行われることを要する目的犯です。強制執行を免れる目的とは、強制執行をしてもその効果があがらないようにする目的を言い、またここで言う強制執行とは、罰金・科料などの公法上の強制執行をも含むとの見解もありますが、一般的には民事訴訟法による強制執行又は同法を準用する強制執行に限られるものと解されています(最判昭和29年4月28日刑集8巻4号596頁)。

本罪の成立には、強制執行が行われることがありうる状態が必要となるが、執行名義が存在する場合のほか、訴訟が係属中であると訴えが提起される以前であるとを問いません。もっとも、その基本となる債権・債務については、以下の見解があります。

  • その存在を必要とする見解。
  • 基本となる債権の存在とは別問題であり、行為の当時債権の存在する合理的可能性があれば足りるとする見解。

行為[編集]

本罪の行為は、強制執行を免れる目的で財産を隠匿、損壊もしくは仮装譲渡し、または仮装の債務を負担することです。財産とは強制執行の対象となり得る動産・不動産および債権をいいます。

隠匿とは、財産の発見を不能または著しく困難にすることであり、持ち去るなどの物理的方法のほか、他人の所有物と偽るような、所有関係を不明にする場合も含みます(最決昭和39年3月31日刑集18巻3号115頁)。損壊とは、財産を破壊し、またはその価値を減少させ、もしくは滅失させることをいいます。仮装譲渡とは、真実譲渡する意思がないのに相手方と通謀して表面上譲渡したように見せかけ、有償または無償で財産の所有名義を変更することです。強制執行を免れる目的であっても、真実譲渡した場合には本罪には該当しません。仮装の債務を負担するとは、存在しない債務を負担するように装うことであり、例えば仮装の債権者と通謀してその仮装の債権者に配当要求をさせ、これを承諾することによって正当な債権者への配当要求を少なくすることなどです。

共犯関係[編集]

仮装譲渡、仮装債務負担においては、当然その相手方が存在することとなりますが、これが共犯として処罰されるかが問題とされます。この問題については、刑法総論の共犯の講座を参照してください。

競売等妨害罪[編集]

競売等妨害罪は、国または公共団体が実施する競売・入札の公正を保護法益とするものです。本罪も抽象的危険犯です。

公の競売または入札とは、国または公共団体の権限ある機関が競売・入札に付す旨の決定をし、これを実施する競売・入札のことです。競売は、売主が二人以上の者に口頭(もしくは文書)で買い受け条件の申し込みを促し、最高額の申し込みをした者に売却するものであり、入札は、競争契約について二人以上の参加者のうち最も有利な申し込みをした者を相手方として契約するため、文書により他の者にその内容を知られずに、申し込みの意思表示をさせるものを言います。

これらの競売・入札は適法に行われることを要します。また、権限ある機関による適法に入札に付すべき旨の決定がなされたことが前提条件となります(最判昭和41年9月16日刑集20巻7号790頁)。

本罪の行為は、偽計または威力を用いて、公の競売・入札を妨害することです。偽計とは、人の判断を誤らせる術策を用いることを言い、例えば入札の際、入札者に敷札額を通報することは偽計にあたるとされています(最判昭和41年9月16日刑集20巻7号790頁)。威力を用いるとは、人の自由意思を抑圧するような力、例えば暴行や脅迫を加えることを言います。

公正を害すべき行為とは、公の競売・入札に不当な影響を及ぼす行為を言います。もっとも、談合は公正を害すべき行為ですが、2項において規定されているため本罪の行為からは除外されます。判例(最決平成10年11月4日刑集52巻8号542頁)では、競売の実施後、最高価申出人に対して、威力を用いて落札した不動産の取得を断念することを要求する行為も、本罪を構成するとされました。

談合罪[編集]

談合罪も、公の競売・入札の公正に対する犯罪であり、権限ある機関による適法な競売・入札の決定がなされたことを成立の前提としますが、談合をすることによって本罪は成立し、談合に従った行動がなされることまでは要しません(最決昭和28年12月10日刑集7巻12号2418頁)。

談合は、公正な価格を害し、または不正な利益を得る目的で行われたことを要します。そのため、一般の取引上是認できる協定は、本罪の対象から除外されることとなります。

公正な価格とは何であるかについては以下の見解があります。

  • 入札を離れて客観的に測定されるべき価格を言うのではなく、その入札において公正な自由競争によって形成されたであろう落札価格であると見解。判例(前出最判昭和28年12月10日など)・多数説の立場です。
  • その入札において公正な自由競争により最も有利な条件を有する者が、実費に適正な利潤を加算した額で落札すべかりし価格を言うとする見解。下級審においてはこれを採るものも存在します。

不正な利益とは、談合によって得られる金銭その他の経済的利益であって、社会通念上祝儀の程度を超え、不当に高額の場合をいうとされます(最判昭和32年1月22日刑集11巻1号50頁)。学説では、落札者としての地位を譲る対価として提供されるものであれば、金額の多寡は問わないとの見解も主張されています。

本罪の行為は談合であり、談合とは、競売・入札の競争に加わる者が通謀して、特定の者を競落者・落札者とするために、一定の価格以下または価格以上に入札・付け値しないことを協定することをいいます。競売人・入札者の全員が談合に加わる必要はなく、その一部による場合であっても入札・競売に不当な影響を及ぼしその公正を害するような協定をなしうる限り、本罪に該当します(最判昭和32年12月13日刑集11巻13号3207頁)。

本罪は一般的には、自由取引による談合に限られ、偽計・威力を用いた談合が行われた場合は、本罪ではなく競売入札妨害罪となると解されます。

(参照 w:公務の執行を妨害する罪