解除

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ここでは、解除について扱います。

この講座は、民法 (債権各論)の学科の一部です。前回の講座は契約の効力、次回の講座は売買・贈与です。

解除とは[編集]

民法の、契約の解除の款において定められている契約の解除とは、債権者が、債務者の債務不履行を理由として、債務者に対する一方的な意思表示によって契約を終了させるものであり(540条1項)、この債権者の権利を解除権といいます。解除権は形成権であり、一方的な解除の意思表示によって売買契約などの契約を解除することができます。

解除権は、このように法律の規定によって生じる場合のほか、当事者間の契約によってこれを生じさせることもでき、法律の規定による解除を法定解除、当事者の契約による解除を約定解除と呼びます。

解除権を持つ者が解除の意思表示をすることで解除の効果が発生し、未履行の債務は消滅し、既履行部分については原状回復義務(返還義務)が生じることとなります(545条1項本文)。

解除の要件[編集]

履行遅滞解除[編集]

履行遅滞による解除をするためには、541条により、以下の要件が必要となります。

  1. 履行遅滞の発生
  2. 催告および相当期間の経過
  3. 債務者の帰責事由(見解により)
  4. 解除の意思表示

なお、解除の意思表示に条件をつけることは、これを認めると債務者を不安定な地位に置くこととなり原則として認められず(債務者を不安定な地位に置くことがない例外的な場合、例えば催告期間内に履行されないことを停止条件とする場合などには認められます。)、また解除の意思表示を撤回することはできません(540条2項)。

履行遅滞[編集]

履行遅滞の発生とは、412条の履行遅滞の状態が生じていることであり、その内容としては、確定期限が定められている場合には、契約の締結、履行期の合意、履行期の経過、そして双務契約の場合には相手方に同時履行の抗弁権があることが契約内容から自明ですから、相手方には同時履行の抗弁権が認められないというため、自らの弁済や弁済の提供、あるいは相手方が先履行であるとの合意を主張する必要があります。履行期の定めがない契約である場合には、412条3項によって、履行期の合意に代わって催告をしたことがその要件に代わります。不確定期限が定められている場合には、その履行期についての合意の存在と、期限の到来を債務者が知ったこと、そして履行期の経過が要件となります。

履行期の経過と不履行
履行遅滞というためには、判例(大判明治38年3月9日民録11輯336頁)は履行期の経過で足るものとしています。この考え方(履行期の経過説)は、履行請求の場合と整合的に考え、履行したことが債務者の抗弁となるという考え方です。これに対して、解除権の発生を認めるためには履行遅滞を言うためには履行期の経過では足らず、履行期内に履行がなされなかったこと(債務者の不履行)まで主張する必要があるとの見解(不履行説)も主張されています。履行遅滞については、民法 (債権総論)債務不履行1の講座も参照してください。
同時履行の抗弁権
履行遅滞を言うために同時履行の抗弁権を阻却する事実を債権者がはじめから主張しなければならないかについては、同時履行の抗弁権をどのように解するかによります。存在効果説に立つ場合には、同時履行の抗弁権が存在するだけでその効果が認められるため、双務契約であることによってその存在が明らかであれば、それがないことを言う必要がありますが、行使効果説に立つ場合には、債務者の行使があってはじめてその効果が認められるため、債権者は、債務者がこれを行使する旨を主張した場合にのみ、債務者に同時履行の抗弁権はないことを主張すればよいこととなります。なお同時履行の抗弁権については、かつては履行遅滞や帰責事由と並ぶ違法性の要件(履行しないことが違法であること)として考えられていました。同時履行の抗弁権については、前回の契約の効力の講座も参照してください。

催告と相当期間の経過[編集]

民法541条では、「相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときには……」と定められており、これは相当期間付催告とその経過と言われるものです。しかし、相当の期間を定めない催告をした場合(短すぎる場合だけでなく長すぎる場合も)や、相当でない期間を定めた催告をした場合に、それが全く意味をなさないものとは考えられておらず、そのような場合についても、催告後、客観的に相当の期間が経過すれば解除権が発生するものと解されています(大判昭和2年2月2日民集6巻133頁、最判昭和44年4月15日判時560号49頁など)。

ここで言う相当の期間とは、債務者が既に履行の準備をしていることを前提として、履行をするのに必要な期間を意味し、また客観的事情によって定められ、債務者の主観的事情、例えばその病気や旅行、多忙などは考慮されません。判例では、青島から落花生を買い付けて引き渡す契約で、3日半の催告期間を相当としたもの(大判大正13年7月15日民集3巻362頁)などがあります。

過大な催告、例えば未払賃料が20万円であるのに、100万円支払えという催告がなされた場合について、本来の債務より著しく大きな履行を求めた場合には特段の事情がない限り本来の債務の弁済の提供がなされても債権者には受領する意思がないと考えられるため、催告としての効力は認められません(最判昭和29年4月30日民集8巻4号867頁、最判昭和32年3月28日民集11巻3号610頁)。これに対し齟齬が小さく、上の例で言えば、例えば30万円の催告がなされたような場合には基本的には受領拒絶の意思が推認される程度ではないと考えられますが、債権者が30万円でなければ受領を拒絶するという意思があると認められる特段の事情がある場合には、やはり催告としての効力は認められないこととなります。

また解除に関して、催告不要の特約を当事者間で締結するのも、場合によっては公序良俗違反(90条)などとなる可能性はありますが、基本的には有効とされています。

そして、期間の定めのない債務については、履行遅滞を発生させるための催告と解除権を発生させるための催告との二度の催告をする必要はなく、一度の催告でこの両方を兼ねることができるものとされています(大判大正6年6月27日民録23輯1153頁)。

帰責事由[編集]

債務者の帰責事由については、まずこれを必要とするか否かで見解の対立があります。債務者の帰責事由は、債務不履行について債務者が非難されるべきものかどうかを問うものであり、損害賠償請求のときと同様に、債務者が非難されうるときのみ解除を認めるべきものと考えた場合、債務者の帰責事由が必要となります。また、帰責事由を必要と解する見解は、履行不能に関して明文で債務者に帰責事由がない場合に解除が否定されている(543条)ことから、履行不能とその他の債務不履行とで異なる扱いをする必要はないとして、履行遅滞でももちろん帰責事由が必要であると解しています。

これに対して、帰責事由を不要とする見解は、解除とは契約当事者を契約の拘束力から解放するものであって損害賠償とは制度の趣旨が異なり、給付を得られない債権者に契約を離脱することを認めるというのが解除の趣旨であるといいます。そこでそのような解除の可否の判断においては、債務者の帰責事由を検討することは不要となるのです。また帰責事由不要説に立つ見解の中には、債権者に契約からの離脱を認めるべきといえるほど重大な契約違反があるか否かを問題とするべきと主張するものもあります。

債務者の帰責事由について、これを必要とする見解に立つと、その主張立証責任がどちらにあるかが問題となりますが、これについては、債権者が債務者に帰責事由があることを主張立証するのではなく、債権者の主張に対して、債務者側が自らに帰責事由がないこと(無過失)を主張立証しなければならないものと考えられています。

履行不能解除[編集]

履行不能による解除をするためには、543条により、以下の要件が必要となります。

  1. 履行不能の発生
  2. 帰責事由(見解により)
  3. 解除の意思表示

履行不能の発生を言うためには、契約の締結と、それによって定められた債務の履行が不能となったことを言うこととなります。履行不能についても、債務不履行1の講座も参照してください。

また、履行遅滞において帰責事由を必要と考える場合には、ここでも、543条から、債務者は履行不能となったことが自己の責めに帰すことのできない事由によるものであること(不可抗力)を主張立証して、解除を否定すること出来ることとなります。

一方、履行遅滞においては帰責事由を不要と考える見解に立ったとしても、履行不能での帰責事由の存否については見解が分かれています。履行不能の場合には帰責事由を必要とする見解は、民法の明文上帰責事由がなければ解除が否定されており、また帰責事由がない場合には危険負担の問題となるものとして、履行不能解除では債務者の帰責事由が問題となるといいます。これに対し、こちらでも帰責事由を不要とする見解は、債権者に契約の拘束力からの離脱を認める必要は変わるものではないと言います。

定期行為の解除[編集]

定期行為とは、契約の性質又は当事者の意思表示によって、特定の日時や一定の期間内に履行をしなければ契約した目的を達することができない契約のことであり、例えばクリスマスケーキの売買などです。

このような定期行為に該当する場合、債権者は、債務者が履行をしないでその時期を経過したときは、催告をせずに直ちに契約を解除できると定められています(542条)。この場合、履行期の経過説によると、契約が定期行為であることと履行期の経過、解除の意思表示を、不履行説によると契約が定期後期であることと履行期内の不履行、解除の意思表示を主張する必要があることとなります。

解除権の消滅[編集]

解除は一方的な意思表示で可能であり、解除がなされるかどうか分からないと、その間債務者は不安定な状態におかれることとなります。そこで、解除の相手方となりうる者は、解除権を有する者に対して、相当期間を定めて解除をするかどうかの確答を求める催告をすることができ、相当期間内に解除の意思表示が到達しなかった場合には、解除権は消滅します(547条)。なおこれは解除の行使期間の定めがない場合であり、行使期間が定められている場合には、その間解除権は存続します。

また、解除権を有する者が、自己の行為や過失により契約の目的物を著しく損傷し、あるいは返還不能にした場合、解除権は消滅します(548条)。自己の行為とは故意による行為を言うものと解されており、このような行為が解除権の発生前に行われたものか発生後に行われたものかは問題となりません。このような場合には、解除がなされると相手方は原物の返還を受けることはできず十分な満足を得られないおそれがあり、そのような状態を作り出した解除権者には帰責性があるため、解除権が消滅させてよいと考えられます。

さらに、判例によると、解除権は債権に準じて167条1項が適用され、解除権を行使できる時から10年で消滅時効にかかります(大判大正6年11月14日民録23輯1965頁、最判昭和62年10月8日民集41巻7号1445頁)。なお解除により生じた原状回復請求権は、解除権とは別の新たな債権であり、解除の時から消滅時効が進行します(最判昭和35年11月1日民集14巻13号2781頁)。一方これに対して、本来の債務と別に解除権のみについて消滅時効を考える余地はないとの見解も主張されます。この見解によると、本来の債務が時効により消滅すれば、その債務不履行による解除をすることもできなくなります。また解除の結果生じる原状回復請求権についても、解除と一体として消滅時効を考える見解も主張されています。

解除の効果[編集]

総説[編集]

解除の効果は545条において定められており、既に行われた給付については原状回復がなされることとなります(545条1項本文)が、解除前の第三者の利益を害することは出来ません(545条1項但書)。また、解除がなされたとしても、債務不履行による損害賠償請求をすることはできます(545条3項)。

直接効果説[編集]

判例および通説は、解除の効果は契約締結時に遡及するという立場に立っています。これが直接効果説と呼ばれる立場であり、解除された契約に基づく給付は、はじめから契約がなかったこととなる結果、法律上の原因のない給付となり、不当利得として返還の対象となります。そこで、545条1項本文の定める原状回復請求権は、703条以下の不当利得の特則として位置づけられることとなります(最判昭和34年9月22日民集13巻11号1451頁)。そして、所有権の移転などの物権変動も、最初から生じなかったこととなります。

このように解すると、契約がはじめからなかった以上、債務不履行もなかったこととなり、損害賠償は認められないこととなるとも考えられますが、判例・通説は、545条3項の規定は債権者を保護するため法律が特に解除の遡及効に制限を加えたものと解して、債権者に履行利益、すなわち契約の履行があれば得ることが出来たであろう利益の賠償請求権を認めています(最判昭和28年10月15日民集7巻10号1093頁)。

また、545条1項但書についても、同様に第三者の利益を保護するため法律が特に解除の遡及効に制限を加えたものと解しています。

原契約変容説[編集]

これは、上記の直接効果説に対して、解除において遡及的構成をとってはじめから契約がなかったという必要はないと批判し、解除の効果の遡及を認めない見解であり、解除によって元の契約上の債権関係は原状回復の債権関係に変化するものと考える見解です。そこで、契約に基づく給付義務はそれを原状に復させる義務に転化し、既に履行がされていれば原状回復が、未履行であればそれ以上履行を要さず、消滅すると考えます。このように考えると、解除は損害賠償には影響せず、545条3項の規定は確認的なものと位置づけられます。また物権は解除によって復帰することとなります。

原状回復[編集]

解除の結果原状回復請求権が発生し、給付物がある場合にはその返還がなされることとなります。当事者双方に給付がなされている場合には、その返還債務は同時履行関係に立つこととなります(546条による533条の準用)。

545条2項により、金銭を受領していた場合には善意・悪意を問わず受領の時からの法定利息を付して返還しなければなりません。そこでこれとの均衡から、金銭以外の物を受領した場合でも、受領の時からの果実・客観的な利用価値を返還しなければならないものと解されます。

また原物に費用が投下されていた場合には、必要費や有益費についてその償還がなされることとなります。

原物の返還不能[編集]

給付された物(原物)が滅失・損傷して返還が不能となっている場合に、どのように処理するかが問題となります。解除前の返還不能であればそもそも解除権は消滅するため解除はできません。解除後の不能については、滅失・損傷に帰責事由がある場合には一般に価格返還義務として存続すると考えられます。これに対し、帰責事由がない場合については見解は分かれており、危険負担についての536条の適用を肯定するか否定するかで以下のように大別することができます。

536条類推適用説
双務契約における給付と反対給付の牽連性を扱う536条の規定を原物の返還不能の場合にも類推して処理するという立場であり、契約の清算関係における給付の返還と反対給付の返還との間に牽連関係を認めることにより、給付と反対給付の一般法理を表していると考える536条の規定の類推を基礎付け、原則として反対債務は消滅し、債権者の責めに帰すべき事由によって不能となった場合にのみ反対債務は存続すると考えることとなります。なお、たとえ特定物についてのものであっても、534条の規定は一般法理を表したものではなく合理性を欠く規定であるため、これを適用すべきとは考えられていません。
危険負担類推否定説
清算関係では、受領した物またはその客観的価値を返還するのを原則とすべきという立場です。この立場からは、536条の規定は契約を実現する場面での等価交換関係を基礎とするものであり、そのような対価的均衡の保障がない契約清算の場面にまで妥当するものではないと主張されます。そして、原物の返還が不能となった場合には、原則としてその物を支配していた者は物の客観的価値を返還しなければならず、例外的に、目的物の滅失・損傷が債権者側の帰責事由による場合には548条1項の趣旨から、返還義務者は価格賠償義務から解放されると考えられます。

(参照 w:解除