訴訟の進行

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ここでは、訴訟手続の進行や訴訟の審理、弁論主義などについて扱います。この講座は、民事訴訟法の学科の一部です。

前回の講座は、訴えの利益、次回の講座は、口頭弁論です。

訴訟手続の進行[編集]

訴えによって開始された訴訟手続の進行の主導権を裁判所に認めるか、当事者に認めるかによって、職権進行主義と当事者進行主義の対立があります。現行法は、職権進行主義をとっています。

裁判資料の収集[編集]

職権進行主義が採用されている手続面とは異なり、訴訟の内容面については主導権が当事者に与えられています。

弁論主義[編集]

弁論主義は、裁判の基礎となる訴訟資料の提出を当事者の機能かつ責任とする建前であり、一般に次の三つの命題からなるものとされています。

まず第一に、裁判所は当事者の主張しない事実を裁判の基礎に据えてはならないということがあります。例えば、裁判所が証拠調べの結果、当事者の主張していない事実があるとの心証を得たとしても、裁判所はその事実を認定して裁判をしてはなりません。これはすなわち、証拠資料による訴訟資料の補充を禁止するものです。

また第二に、裁判所は当事者間に争いのない事実に反する事実を認定してはならないということがあります。例えば当事者の自白がある場合には、裁判所はこれに拘束され、証拠によりこれと反する事実があるとの心証を得たとしても、自白に反する事実認定をしてはならないこととなります。これはすなわち、訴訟資料に反する証拠資料を排除するものといえます。

そして第三に、当事者間に争いのある事実の認定においては、当事者の申し出た証拠によらなければならないということがあります。すなわち、裁判所は当事者の申し出がない証拠を取り調べてはならず、職権による証拠資料の取調べは禁止されます。

以上のような弁論主義は、私的自治の訴訟法的な反映として、民事訴訟を当事者の意思を尊重し、あくまで当事者間において紛争解決をするものであるという民事訴訟の目的に沿ったものであり、弁論として主張された事実である訴訟資料を尊重するものです。

第一の命題[編集]

第一の命題にいう事実とは、訴訟上のすべての事実をいうのではなく、主要事実がその適用対象であり、間接事実や補助事実には適用はないと考えられています。

主要事実
主要事実(直接事実)とは、権利の発生や変更、消滅といった法律効果を判断するのに直接必要となる事実をいいます。
間接事実
間接事実とは、主要事実の存否を推認するのに役立つ事実のことをいいます。例えば、お金に困っていた者が金回りが良くなったこと(金銭の借り入れや不動産の売却などについて)や、アメリカに出張中で不在であったこと(契約の不成立などについて)などです。
補助事実
補助事実は、証拠の信用性に影響を与える事実のことをいいます。例えば、ある証人は被告に多額の融資をしており、被告が債務を負担することとなると困る立場にあることなどです。

第二の命題や第三の命題については、証拠調べを参照してください。

(参照 w:民事訴訟法#弁論主義

主張責任[編集]

上記の弁論主義の第一の命題から派生するものとして、主張責任があります。弁論主義の下では、裁判所は当事者が主張しない事実を裁判の基礎に据えてはならないため、ある事実が主張されない場合に、当事者のどちら側にそれによる不利益を負わせるかを決定する必要があります。ここで、ある事実が主張されていないことから生じる一方当事者の不利益を、主張責任といいます。

主張責任は、ある事実が主張されていないという結果についての結果責任であり、一方当事者に主張の義務を負わせるといったものではありません。その意味で、主張責任が当事者に対し争点の形成を促すこととなるのは、あくまで事実上の機能にすぎないものと言われています。そして、ある事実が弁論にあらわれている限りそれは争点となったのであるから、それを主張した者が主張責任を負う当事者であるか、他方の当事者であるかは問わないという、主張共通の原則も導かれることとなります。

釈明権[編集]

上記のように弁論主義の下、事実の主張や証拠の提供は当事者の責任となりますが、弁論においてなされた当事者の申し立てが不明瞭であったり、矛盾しているなどして、裁判所がその真意を測りかねたり、当事者の主張や立証が不十分で、そのままで敗訴することになるという場合があります。このような場合にあくまで当事者の責任であるとして、裁判所がこれを放置して、そのまま敗訴としてしまうのでは、国民が司法的救済を受ける道を狭め、国民の司法への信頼を失うことともなりかねません。そこで、裁判所には、事実の内容となる事実関係や法律関係を明らかにするため、当事者に質問を発し、または立証を促すことが認められています(149条1項)。これを釈明権と言います(当事者の釈明をする権利ではありません。)。