訴訟当事者

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ここでは、訴訟当事者に関して、当事者の概念や当事者能力、訴訟能力、弁論能力などについて扱います。また、訴訟上の代理人についても、ここで扱います。

この講座は、民事訴訟法の学科の一部です。前回の講座は受訴裁判所、次回の講座は当事者適格です。

当事者[編集]

当事者とは一般に、訴えまたは訴えられることにより判決の名宛人となる者をいいます。

訴えまたは訴えられることにより、ということは、民事訴訟の二当事者対立構造を表しており、利害の対立する紛争当事者を訴訟当事者として手続きに関与させ、それぞれの主張・証拠をぶつけ合わせる地位と機会を与えるという訴訟構造を前提とするものです。

また、判決の名宛人となる者という定義は、当事者とは訴えによって決定されるものであるという、形式的当事者概念を前提としています。すなわち、訴訟当事者となるためには自己の名において判決を求めれば十分であって権利者自身である必要はなく、これは権利義務の主体として主張されている者が当事者となるという、実質的当事者概念を否定する立場に立つものです。

このような当事者の確定については、従来、訴状の記載から合理的に解釈される者を当事者とするものと考える表示説が通説となっていました。そしてこれに対して、原告ないし裁判所の意思内容を基準とする意思説や、当事者らしく振舞い、当事者として扱われた者を当時者とする行動説も主張されてきました。また、その他これらを組み合わせた説なども主張されています。もっとも現在では、具体的事例によって問題となる局面は異なるため、具体的問題と離れて当事者確定を論じることはないとも考えられています。

(参照 w:当事者

当事者能力[編集]

当事者能力とは、民事訴訟において当事者となることのできる一般的な資格のことです。これは民法上の、権利義務の主体となり得る能力である権利能力に対応するものであり、訴訟法上の主体として訴訟追行の効果を受け、判決の名宛人として判決効の帰属主体となることのできる資格を指します。

一般的資格とは、提起された請求との関係で具体的な訴訟追行の資格を問う当事者適格とは区別される、より一般的な訴訟要件であることを意味します。

民事訴訟は私法上の権利義務ないし法律関係の存否を確定することで紛争を解決するものであり、私権の享有主体となるものについて訴訟手続きの主体として認める必要があります。そこで28条では、当事者能力につき原則として民法その他の法令によるものと定めています。

権利能力なき社団・財団[編集]

29条は、権利能力なき社団・財団について、代表者又は管理人の定めがあるものについては、その名において訴え、または訴えられることができるとして当事者能力を認めており、これは相手方が団体の構成員を探索しなければならないという負担を回避し、訴訟手続きを簡明なものとするための規定と考えられます。これにより権利能力なき社団などが訴訟の当事者となると、判決の効力は当事者(ここではその権利能力なき社団など)についてのみ及ぶため、個々の構成員には及ばないこととなります。

どのような場合に権利能力なき社団として認められるかについては、民法 (総則)法人の講座を参照してください。

また判例(最判昭和37年12月18日民集16巻12号2422頁など)においては民法上の組合についても29条に該当し当事者能力が認められるとしています。

訴訟能力[編集]

訴訟能力は、ある者が単独で訴訟行為を有効に行うことができる資格のことです。訴訟能力についても、特別の定めがある場合を除いて民法その他の法令に従うこととされており(28条)、これは私法上の行為能力に対応するものです。

また、31条本文では、未成年者及び成年被後見人が訴訟無能力者であると定められています。被保佐人・被補助人については、一定の訴訟行為をする場合に訴訟能力に制限が加えられていますが(32条2項)、相手方の提起した訴え・上訴について訴訟行為をするには保佐人等の同意その他の授権を要しないものとされています(32条1項)。

訴訟能力の制限に違反した行為は、私法上の行為能力制限違反と異なり、取消しうるものではなく当然に無効となります。また、これを追認することはできます(34条2項)が、一部についてのみ追認することはできず、追認する場合にはその者の行った全ての訴訟行為について有効としなければならなりません。このような規定は、訴訟手続きの安定・明確化を図るためのものです。

このような訴訟能力の具備は、当事者能力などと異なり、訴訟要件ではありません。訴訟能力を欠く者が単独で訴えを提起した場合や訴状送達を受けた場合には訴えが却下されますが、それは訴訟要件を欠くためではなく、その訴え提起や訴状送達の受領行為が無効であり、訴訟係属自体が適法でない結果として訴えが却下されることとなります。

以上の例外として、身分上の行為は本人の意思に従い行わせるという民法に対応する形で、人事訴訟においては、意思能力を有する限り、行為能力を制限された者であっても訴訟能力を有するものとされています。

弁論能力[編集]

弁論能力とは、訴訟手続きに関与して現実に訴訟行為を有効に行う資格をいいます。弁論能力は訴訟手続の円滑迅速な進行と、司法制度の適切な運営のための制度であり、そのため当事者のみならず代理人等についても問題となります。

裁判所は、弁論能力を欠く者を訴訟から排除し、その訴訟行為を無視することができます。また、訴訟関係を明瞭にするために必要な陳述をすることができない当事者等について、陳述を禁止する裁判を行い、口頭弁論続行のため新たな期日を定めることができます(155条1項)。

代理人[編集]

代理人とは[編集]

上記のように当事者能力があれば訴訟主体となり得ますが、訴訟能力がなければ訴訟行為はできないため、代理人による訴訟行為が行われる必要があります。また、訴訟能力があるものについても、その活動領域を広げ、法律の専門家により法律知識を補うことを可能にする点において、代理制度は有用なものです。

訴訟法における代理人とは、本人の名において、これに代わって自己の意思により訴訟行為をし、またはこれを受ける者をいいます。他人の訴訟行為を伝達するだけであればそれは使者であり、また他人のために訴訟追行をする者であっても、当事者として自己の名において訴訟追行するのであれば代理人ではありません。訴訟法における代理人にも、本人の意思によらずに選任される法定代理人と、本人の意思により選任される任意代理人とがあります。

訴訟代理人[編集]

訴訟代理人とは、訴訟上の任意代理人であって、包括的な代理権を与えられた者のことです。これは、法令により訴訟代理人となると定められている、法令による訴訟代理人と、訴訟委任による訴訟代理人とに分けられます。訴訟代理人は、狭義には訴訟委任による訴訟代理人のみを指します。訴訟委任による訴訟代理人の権限については、55条において、特別授権事項(55条2項)を除く包括的な権限が法定されています。訴訟代理人は任意代理人の一部に当たり、その選任が本人の意思により行われるものです。

法令上の訴訟代理人としては、商法21条1項に定められる支配人などがあり、このような法令上の訴訟代理人は、裁判上の権限が与えられることが法定されているのではありますが、あくまで本人の授権によりその地位についているため、任意代理人に含まれるものと考えられます。

複数の訴訟代理人を選任することも可能です。ただしその場合、手続きを円滑にするめるため、各訴訟代理人は単独で代理する権限を有し、本人との間で共同代理と定めてもそれは内部関係にとどまります(56条)。

弁護士代理の原則[編集]

訴訟委任による訴訟代理人については、54条1項本文において、原則として弁護士でなければ訴訟代理人となることができない旨が定められています。これを弁護士代理の原則と言い、その趣旨は、訴訟手続きの円滑な進行を図ること、および、専門的知識を有しまた懲戒制度等も定められている弁護士を代理人とすることで、本人の利益を保護するためのものであると考えられます(いわゆる三百代言の排除)。

(参照 w:訴訟代理人

法定代理人[編集]

訴訟法において法定代理人となる者としては、まず実体法上の法定代理人があります(これも28条により民法その他の法令に従うものの一つです)。

また、訴訟法上の特別代理人も定められています。これは、個々の訴訟のために裁判所が選任するものです。その主なものとしては、訴訟無能力者などのために、それらの者に法定代理人がいない、あるいは法定代理人がいても利益相反などによって代理権を行使することができない場合に、相手方は法定代理人を相手にして訴えを提起しなければならないため、そのままでは訴えを提起することができないこととなりますが、そうすると権利行使の途を閉ざされてしまうこととなって不当なため、このような場合には、受訴裁判所の裁判官が特別代理人を選任するというものがあります(35条)。このように、特別代理人の制度は本来、無能力者の相手方保護の制度であり、相手方が申請人となるものですが、無能力者の側で訴訟法上の特別代理人の選任を申請することも認めてよいとの見解も主張されています。

(参照 w:特別代理人