0.5 や 0.25 のような小数は、 や のような分数を使って表すことができます。
さらに、0.3333333333... のような無限に続く小数も、 という分数を使って表すことができます。
0.5 や 0.25 のような小数と、0.3333333333... のような小数を区別するために、小数点以下の数字が限りなく続く小数を無限小数(むげんしょうすう、infinite decimal)、小数点以下の数字がどこかで終わる小数を有限小数(ゆうげんしょうすう、finite decimal)といいます。
0.5 や 0.25 は有限小数です。0.3333333333... や 0.31818181818... は無限小数です。
0.3333333333... や 0.318181818... のような無限小数は、よく見ると小数点以下で 33333... や 181818... のように、同じ数字の並びが繰り返されていることがわかります。このように小数点以下のどこかで決まった数字の並びが繰り返される無限小数のことを、とくに循環小数(じゅんかんしょうすう、repeating decimal)といいます。
循環小数には次のようなものがあります。
循環小数の同じ数字が繰り返しになっている部分のことを、循環節(じゅんかんせつ、repeating)といいます。
循環小数をいちいち 2.142857... のように「...」を使って書くのは面倒であり、パッと見て循環節がわかりにくいので、循環節の最初の数字と最後の数字の上に点をつけて表すことにします。この表し方を使って上の循環小数を書き直すと、次のようになります。
これでだいぶ見やすくなりました。
のような循環小数を分数に直すには、次のような計算をします。まず循環小数を x とおくと、
x を10倍すると、
を計算すると、
見事に が求められました。同じような考え方で を分数で表してみます。
このように、一般に n 桁の循環節をもつ循環小数 x は、 倍して を計算することで循環節を打ち消し、両辺を で割ることで分数に直すことができます。
- 注意
- 厳密には のように循環節が「打ち消しあう」という部分が曖昧ですが、数学IIIで学習する極限では、無限等比級数の和を用いてこの考え方が正しいことを示します。
- 問題
- 循環小数 を分数(または整数)に直せ。
- 解答
- とおくと、
- 両辺を9で割ると、
- したがって、0.999... = 1。
- 別解
- であるから、
- したがって、0.999... = 1。
- 解説
- 0.999... は 1 に等しいです。厳密な証明は数学IIIで行いますが、0.999... は限りなく 1 に近づいていく無限小数であり、そのような無限小数は 1 に等しいと定義します。
- 言い換えれば、まったく同じ数を表すのに 1 と 0.999... という2通りの表し方があるということです。限りなく 1 に近づいていく無限小数 0.999... が 1 と等しくないとすると、0.999... と 1 の間は途切れているということになってしまい、なめらかにつながった数直線で数を表すことができなくなってしまいます。詳しくは数学IIIの教科書を参照してください。
ところで、これまで出てきた小数はすべて有限小数か循環小数のどちらかでしたが、無限小数のうち小数点以下に同じ数字が繰り返されることのない、循環しない無限小数というのは存在しないのでしょうか。
以下の表は、掛け算九九の表を 9 × 9 から 20 × 20 に拡張したものです。このような表を、乗算表(じょうざんひょう、multiplication table)といいます。
20 × 20 の乗算表
×
|
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
16 |
17 |
18 |
19 |
20
|
1
|
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
16 |
17 |
18 |
19 |
20
|
2
|
2 |
4 |
6 |
8 |
10 |
12 |
14 |
16 |
18 |
20 |
22 |
24 |
26 |
28 |
30 |
32 |
34 |
36 |
38 |
40
|
3
|
3 |
6 |
9 |
12 |
15 |
18 |
21 |
24 |
27 |
30 |
33 |
36 |
39 |
42 |
45 |
48 |
51 |
54 |
57 |
60
|
4
|
4 |
8 |
12 |
16 |
20 |
24 |
28 |
32 |
36 |
40 |
44 |
48 |
52 |
56 |
60 |
64 |
68 |
72 |
76 |
80
|
5
|
5 |
10 |
15 |
20 |
25 |
30 |
35 |
40 |
45 |
50 |
55 |
60 |
65 |
70 |
75 |
80 |
85 |
90 |
95 |
100
|
6
|
6 |
12 |
18 |
24 |
30 |
36 |
42 |
48 |
54 |
60 |
66 |
72 |
78 |
84 |
90 |
96 |
102 |
108 |
114 |
120
|
7
|
7 |
14 |
21 |
28 |
35 |
42 |
49 |
56 |
63 |
70 |
77 |
84 |
91 |
98 |
105 |
112 |
119 |
126 |
133 |
140
|
8
|
8 |
16 |
24 |
32 |
40 |
48 |
56 |
64 |
72 |
80 |
88 |
96 |
104 |
112 |
120 |
128 |
136 |
144 |
152 |
160
|
9
|
9 |
18 |
27 |
36 |
45 |
54 |
63 |
72 |
81 |
90 |
99 |
108 |
117 |
126 |
135 |
144 |
153 |
162 |
171 |
180
|
10
|
10 |
20 |
30 |
40 |
50 |
60 |
70 |
80 |
90 |
100 |
110 |
120 |
130 |
140 |
150 |
160 |
170 |
180 |
190 |
200
|
11
|
11 |
22 |
33 |
44 |
55 |
66 |
77 |
88 |
99 |
110 |
121 |
132 |
143 |
154 |
165 |
176 |
187 |
198 |
209 |
220
|
12
|
12 |
24 |
36 |
48 |
60 |
72 |
84 |
96 |
108 |
120 |
132 |
144 |
156 |
168 |
180 |
192 |
204 |
216 |
228 |
240
|
13
|
13 |
26 |
39 |
52 |
65 |
78 |
91 |
104 |
117 |
130 |
143 |
156 |
169 |
182 |
195 |
208 |
221 |
234 |
247 |
260
|
14
|
14 |
28 |
42 |
56 |
70 |
84 |
98 |
112 |
126 |
140 |
154 |
168 |
182 |
196 |
210 |
224 |
238 |
252 |
266 |
280
|
15
|
15 |
30 |
45 |
60 |
75 |
90 |
105 |
120 |
135 |
150 |
165 |
180 |
195 |
210 |
225 |
240 |
255 |
270 |
285 |
300
|
16
|
16 |
32 |
48 |
64 |
80 |
96 |
112 |
128 |
144 |
160 |
176 |
192 |
208 |
224 |
240 |
256 |
272 |
288 |
304 |
320
|
17
|
17 |
34 |
51 |
68 |
85 |
102 |
119 |
136 |
153 |
170 |
187 |
204 |
221 |
238 |
255 |
272 |
289 |
306 |
323 |
340
|
18
|
18 |
36 |
54 |
72 |
90 |
108 |
126 |
144 |
162 |
180 |
198 |
216 |
234 |
252 |
270 |
288 |
306 |
324 |
342 |
360
|
19
|
19 |
38 |
57 |
76 |
95 |
114 |
133 |
152 |
171 |
190 |
209 |
228 |
247 |
266 |
285 |
304 |
323 |
342 |
361 |
380
|
20
|
20 |
40 |
60 |
80 |
100 |
120 |
140 |
160 |
180 |
200 |
220 |
240 |
260 |
280 |
300 |
320 |
340 |
360 |
380 |
400
|
乗算表の一番左上から一番左下にかけての対角線(主対角線)上には、同じ整数を2回掛けてできる数
- ...
が現れていることがわかります。このような整数 n を2乗した数 を総称して、平方数(へいほうすう、square numbers)といいます。平方数は整数 n の自分自身との積 です。
- 補足
- 2乗のことを平方(へいほう、square)ともいうので、整数 n を2乗した数 のことを平方数(へいほうすう、square numbers)といいます。
20 × 20 の乗算表から得られる 以下の平方数は次のとおりです。
400以下の平方数
n
|
0 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
16 |
17 |
18 |
19 |
20
|
|
0 |
1 |
4 |
9 |
16 |
25 |
36 |
49 |
64 |
81 |
100 |
121 |
144 |
169 |
196 |
225 |
256 |
289 |
324 |
361 |
400
|
なので、0 も平方数の一つです。負の整数 の2乗 は正の整数 n の2乗 に等しいので、たとえば2乗して 4 になる数というのは、 より、2 と -2 の 2 つあることがわかります。
一般に2乗すると a になる数を、a の平方根(へいほうこん、square root)といいます。a の平方根は二次方程式 の解 x です。
たとえば 4 の平方根は 2 と -2 であり、9 の平方根は 3 と -3 です。 であることから、一般に 0 でない a の平方根は正の平方根(せいのへいほうこん、principal square root; 主平方根)と負の平方根(ふのへいほうこん、negative square root)の2種類あります。ただし、0 の平方根は なので 0 だけです。
a の正の平方根を と書き、「ルート a」と読みます。a の負の平方根は で表します。正の平方根と負の平方根をあわせて と書きます。
- 補足
- 2乗のことを平方(へいほう、square)ともいいます。二次方程式の解は根(こん、root)とも呼ばれるので、二次方程式 の解を平方根と呼ぶのです。 は根号(こんごう、radical symbol)と呼ばれる記号で、平方根を表すために使用します。プラスとマイナスを合わせた ± は複号(ふくごう、plus-minus sign)と呼ばれる記号で、「プラスマイナス」と読みます。
- 注意
- 「a の平方根」と言った場合は、a の正の平方根 と負の平方根 の2つを指しているのに対し、単に「」と書いた場合は正の平方根のみを指していることに注意してください。
ここで、一辺の長さが1の正方形を考えます。この正方形の面積は 1 × 1 = 1 なので、この正方形を対角線で区切って半分にした三角形の面積は です。この面積が の三角形を4つ組み合わせると、面積が の大きな正方形ができあがります。面積が2の正方形の一辺の長さ x は、最初に考えた一辺の長さが1の正方形の対角線の長さに等しくなり、次の方程式を満たします。
したがって、x は 2 の正の平方根 です。 は 2 乗すると 2 になる正の数を表しています。
それでは、 は実際にどのくらいの大きさの数なのでしょうか。2乗して2になる数を考えると、
なので、 の解は1より大きく、2より小さい小数になると考えられます。
さらに
なので、
であることがわかります。
このような計算で小数点以下を絞り込んでいき、 の値を小数第10位まで求めると、次のようになりました。
まだ の正確な値は求められません。この計算はいくらやっても終わらないので、 は無限小数であると考えられます。さらに の小数点以下は同じ数字の繰り返しになることがないので、 は循環しない無限小数であると考えられます。
- 補足
- 無理数の値を求めることを、無理数を評価(ひょうか、estimate)するといいます。
10以下の自然数の正の平方根(小数第100位まで)
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|
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|
循環しない無限小数は、分子と分母が整数の分数で表すことはできません。つまり、数には有限小数や循環小数のように「分子・分母ともに整数の分数で表すことができる数」と、循環しない無限小数のように「分子・分母ともに整数の分数で表すことができない数」の2種類があると考えられます。
分子・分母ともに整数の分数で表すことができる数を、有理数(ゆうりすう、rational numbers)といいます。有理数は整数の分数、つまり比 (ratio) になる数なので、rational number(レイショナル・ナンバー)と呼ばれます。 や 、 などは有理数です。
分子・分母ともに整数の分数で表すことができない数を、無理数(むりすう、irrational numbers)といいます。無理数は循環しない無限小数と同じです。 や は循環しない無限小数であり、分子・分母が整数の分数で表すことができないので、無理数です(詳しくは √2が無理数であることの証明を参照)。
有理数と無理数をあわせて実数(じっすう、real numbers)といいます。実数は有理数と無理数に分けられます。有理数でない実数は無理数であり、無理数でない実数は有理数です。
定義(有理数・無理数)
整数 m, n を用いて と表すことのできる数 r を有理数(ゆうりすう、rational numbers)という。有理数でない実数を無理数(むりすう、irrational numbers)という。
- 補足
- 整数 n は という分数で表すことができるので、有理数に含まれます。
- 注意
- a を実数とすると、 が常に成り立つので、実数は2乗すると必ず正の数になります。つまり、 は のときだけ意味をもちます。正の数の平方根は必ず実数になりますが、負の数の平方根は実数の範囲には存在しません。負の数の平方根は虚数(きょすう、imaginary numbers)といい、数学IIでは虚数と実数を合わせた複素数(ふくそすう、complex numbers)という数の体系を考えます。
- 数の体系
有理数の和・差・積・商は有理数になり、実数の和・差・積・商は実数になります(ただし0で割ることは考えません)。以下の表はある数の体系の中で四則計算が自由に行えるかどうか(たとえば自然数の和がまた自然数になるかどうかなど)をまとめたものです。
数の体系と四則計算
数の体系
|
加法 |
減法 |
乗法 |
除法
|
自然数
|
自然数 |
整数 |
自然数 |
有理数
|
整数
|
整数 |
整数 |
整数 |
有理数
|
有理数
|
有理数 |
有理数 |
有理数 |
有理数
|
実数
|
実数 |
実数 |
実数 |
実数
|
- 補足
- このことを有理数の全体や実数の全体は、加法・減法・乗法・除法(加減乗除)の四則計算に関して閉じているといいます。有理数の全体や実数の全体のように、四則計算を自由に行うことのできる数の集まりを体(たい、field)といいます。有理数の全体や実数の全体は体ですが、自然数の全体や整数の全体は体ではありません。
実数全体はなめらかに切れ目なくどこまでもつながっているので、同じような性質をもつ直線を使って表現することができます。これを数直線(すうちょくせん、number line)といいます。一つの実数は直線上の一つの点に対応します。
数直線では、実数の 0 に対応する点を基準として、その点から左右に任意の間隔でめもりをつけて数の範囲を表します。この基準となる点を原点(げんてん、origin)といい、記号 O で表します。任意の実数は、原点からどれだけ離れているかを考えて数直線上に点をとることができます。
たとえば、実数 1 は原点 O から右に 1 だけ離れた点 P(1) に対応させることができます。
また、-1 という実数は、原点 O から左に 1 だけ離れた点 P(-1) に対応させることができます。
点 P(1), P(-1) はどちらも原点 O からの距離は 1 で等しいですが、原点 O から見て互いに逆方向の位置にあります。
数直線上で、ある実数 x を点 P(x) に対応させたとき、点 P(x) と原点 O との距離を x の絶対値(ぜったいち、absolute value)といい、記号 で表します。
定義(絶対値)
実数 x に対応する数直線上の点 P(x) と原点 O との距離を、x の絶対値といい、 と書く。
絶対値 はある実数 x が、数直線上で原点 O からどれだけ離れているかの距離を与えるものといえます。たとえば 1 の絶対値は 1 であり、-1 の絶対値は 1 です。ただし、0 の絶対値は であると定義します。
絶対値はある実数 x に対応する点 P(x) が、原点から見て左にあるか、右にあるかという方向は考えずに、ただ原点からどれだけ離れているかという情報のみを取り出したものといえます。
これは実数 x が正の数(プラス)なのか、負の数(マイナス)なのかは考えずに、実数の大きさのみを取り出したものともいえるので、次のように定義することもできます。
定義(絶対値)
実数 x の絶対値 を次のように定義する。
つまり , のように、実数 x から符号を取り除いたものが x の絶対値 であるといえます。言い換えれば、 は のとき になります。たとえば であり、一般に のとき、 です。したがって、絶対値には次のような性質があります。
定理(絶対値の非負性)
任意の実数 a について、
が成り立つ。
このように , の2つの場合に場合分けをして考えることにより、絶対値の定義 から絶対値のさまざまな性質を導き出すことができます。たとえば、実数 a, b の絶対値の積 は次のように簡単にすることができます。
定理(絶対値の積)
任意の実数 について、
が成り立つ。
証明(絶対値の積)
絶対値の定義 を用いて、a, b が同符号の場合と、a, b が異符号の場合に場合分けをして考える。
まず a, b が同符号の場合、すなわち (a, b がともに正)または (a, b がともに負)の場合を考える。 のとき、
であるが、 より 、すなわち であるから、
が成り立つ。また のとき、
であるから成り立つ。次に a, b が異符号の場合、すなわち (a が正、b が負)または (a が負、b が正)の場合を考える。 のとき、
であるが、 より であるから、
が成り立つ( が負のとき に注意)。また のとき、
が成り立つ。したがって、任意の実数 a, b について が成り立つ。∎
さらに絶対値の商 () について、次のことがいえます。
定理(絶対値の商)
任意の実数 について、
が成り立つ。
証明(絶対値の商)
絶対値の定義 より、a, b がともに同符号の場合と、a, b がともに異符号の場合に場合分けをして考える。
まず のとき、
より であるから、
が成り立つ。 のとき、
が成り立つ。次に のとき、
より であり、任意の実数 について であるから、
が成り立つ。 のとき、
が成り立つ。したがって、任意の実数 a, について が成り立つ。∎
実数 a と a の絶対値 の大小関係を考えてみましょう。絶対値の定義 より、a が 0 以上のとき となるので、a と は等しいことがわかります。a が負のときは、 となって は必ず正になるので、 が成り立ちます。まとめると、任意の実数 a について、
が成り立ちます(等号成立は のとき)。これは a の符号を反対にしても、同様に が成り立つので、次のことがいえます。
定理
任意の実数 a について、
が成り立つ。